日本は海に囲まれた島国であり、古くから魚を食糧とする文化が根付いています。しかし、世界的に見て、私たちが食卓で目にする魚が、捕獲・養殖から流通に至る過程でどのような扱いを受けているか、特に「殺処分」の方法について、あまり知られていません。毎年膨大な数の魚が食用として殺されていますが、その多くが、想像を絶する激しい痛みを伴う方法で処理されているという現実があります。この食用魚の殺処分における苦痛について、最新の研究や海外メディアの報道から見えてきた実態をお伝えします。
食用として殺される膨大な数の魚
英紙「インディペンデント」の報道によると、人間の食用として、毎年最大約2兆2000億匹もの野生の魚と、約1710億匹の養殖魚が殺されています。この途方もない数字は、私たちがどれほど魚に依存しているかを示していますが、同時に、その過程で発生する倫理的な問題も浮き彫りにしています。
魚を捕獲する漁船のイメージ
科学が示す魚の「激痛」
こうした大量の魚の多くは、私たち消費者の手に届く前に、極めて強い痛みを経験していることが研究で示されています。学術雑誌「サイエンティフィック・レポート」に掲載された、世界中で食用とされる一般的な魚種であるニジマスを対象にした研究結果を引用し、インド紙「タイム・オブ・インディア」は衝撃的な事実を報じました。
世界で最も一般的な殺処分方法「空気窒息」
特に問題視されているのが、「空気窒息」と呼ばれる殺処分方法です。これは、魚を水から引き上げることで、酸素欠乏を引き起こし、パニック状態を経て、ゆっくりと意識不明に陥らせる方法です。残念ながら、この方法は世界中で最も広く用いられています。
最長24分間続く苦しみ
タイム・オブ・インディア紙が報じた研究結果によれば、空気窒息で殺処分されるニジマスは、平均約10分間も激しい痛みを感じ続けることが分かりました。さらに、水から引き上げられた魚は、意識を失うまでに最大で24分間も苦しむ可能性があるとされています。この間、魚のエラは潰れ、パニックに陥って激しく喘ぎ、血液中の化学バランスが崩壊し、二酸化炭素が蓄積することで酸素が失われていきます。文字通り、叫ぶこともできずに苦痛にのたうつ状態です。この事実は、魚もまた痛みや苦しみを感じる生き物であるという認識を深める上で重要です。
食用魚の福祉を考える
大量の食用魚が、空気窒息のような痛みを伴う方法で殺処分されているという事実は、私たちの食文化と倫理観に一石を投じます。魚も痛みを感じる生き物であるという科学的知見を踏まえ、より人道的(より動物福祉に配慮した)な殺処分方法への移行や、持続可能で倫理的な漁業・養殖のあり方について、国際的な議論が深まることが期待されます。私たち消費者も、どのような食品を選び、食卓に並べるかを見直すきっかけになるかもしれません。
参照
- Independent紙
- Times of India紙
- Scientific Reports (学術雑誌)