正義、非戦、命、食と飢え、そして愛と勇気──国民的キャラクター「アンパンマン」を生み出した漫画家やなせたかしさん(享年94)は、その作品に多様なメッセージを込めてきました。やなせさんの波乱に満ちた人生と妻・暢さんとの夫婦の物語を描くNHK連続テレビ小説『あんぱん』が放送されている今、アンパンマンと深い縁で結ばれた名優がドラマに登場し、物語にさらなる深みを与えています。特に注目されているのが、長年アンパンマンの声を務めるあの声優の出演です。
『アンパンマン』声優陣のリアル出演が話題に
朝ドラ『あんぱん』は、やなせたかしさんをモデルにした主人公・柳井嵩(北村匠海、27才)と、妻・のぶ(今田美桜、28才)の視点から、昭和の激動の時代を舞台に描かれています。このドラマの大きな見どころの一つが、アニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)の声優陣がキャストとして出演している点です。嵩が通った芸術学校の教師・座間晴斗役をジャムおじさんやめいけんチーズなどの声を務める山寺宏一さん(63才)が演じました。また、あんぱんのにおいに惹かれて買い物をしている女性役を、しょくぱんまん役の島本須美さん(70才)が、ばいきんまん役の中尾隆聖さん(74才)は、のぶが教師として採用された小学校の校長先生役を演じるなど、人気声優たちが次々と登場しています。
キャラクターモチーフとの連動も
『あんぱん』には、『アンパンマン』のキャラクターがモデルになっているとされる登場人物が複数います。例えば、ヒロインののぶはドキンちゃん、パン職人のヤムおんちゃん(阿部サダヲ、55才)はジャムおじさんがモチーフだと言われています。そこにアニメの声優陣までがリアルな役柄で出演することで、物語にユニークな奥行きとファンにとってはたまらない感動が生まれていると、NHK関係者は語っています。
満を持して、アンパンマン本人の声が登場
声優陣の豪華な起用が続いたことで、多くのファンが期待を膨らませていたのが、アニメ開始当初から35年以上にわたってアンパンマンの声を担当している戸田恵子さん(67才)の登場でした。ドラマの制作統括である倉崎憲氏も、放送開始前の会見で戸田さんの出演について「何かしらの形でご一緒できたら」と含みを持たせていたことが、期待感を一層高めていました。
NHK連続テレビ小説「あんぱん」に出演する戸田恵子さん
そしてついに、7月に戸田恵子さんがドラマに登場することが明らかになりました。戸田さんが演じるのは、戦後、新聞社に勤め始めた柳井嵩の仕事相手となる人物です。新聞記者としての嵩を助け、導いてくれる重要な役どころを担います。
戸田恵子の役柄は「てっかのマキちゃん」がモデル
ほかの登場人物と同様、戸田さんの役どころにも『アンパンマン』のキャラクターがオマージュされています。関係者によると、そのモデルは意外にもメインキャラクターではない「てっかのマキちゃん」だといいます。マキちゃんは、少し短気ではあるものの、困っている人を見過ごせない、人情味あふれるチャキチャキした性格の女の子として描かれています。
アンパンマンの映像化20周年記念パーティーで並ぶ戸田恵子さん(左)とやなせたかしさん(右)
やなせさんは生涯にわたり数多くの個性豊かなキャラクターを生み出し続け、その数は2009年にはアンパンマンのアニメシリーズ登場キャラクター数として1768体がギネス世界記録に認定されるほどでした。そのたくさんのキャラクターの中でも、やなせさんはてっかのマキちゃんに特別な思い入れを持っていたようです。モチーフとなった鉄火巻はやなせさんの大好物であり、メインキャラではないにもかかわらず、彼女にはオリジナルのキャラクターソングがあるほどファンも多いのです。生前、やなせさん自身がマキちゃんについて、「主役を任せられそう」と語るほど、そのキャラクター性を高く評価していました。「困った人を放っておけない」というマキちゃんの性格は、やなせさんが『アンパンマン』という作品を通して最も伝えたかった大きなテーマの一つを体現しています。ドラマ制作陣は早い段階から、戸田さんの人物設定や役名に、このてっかのマキちゃんを想起させる要素を取り入れようと考えていたと、別のNHK関係者は明かしています。
結論
連続テレビ小説『あんぱん』における『それいけ!アンパンマン』声優陣、特に長年主人公の声を担当してきた戸田恵子さんの出演は、単なるファンサービスに留まりません。彼女が演じる役柄が、やなせたかしさん自身が強い思い入れを持ち、「困った人を放っておけない」という作品の根幹テーマを体現するてっかのマキちゃんをモチーフとしていることは、ドラマに込められたやなせさんのメッセージをより深く掘り下げる意図があることを示唆しています。この巧妙なキャスティングとキャラクター設定の連動は、ドラマ『あんぱん』が描くやなせさんの人生と『アンパンマン』の世界観を一層魅力的に結びつけ、視聴者に感動を与えています。
参考文献
https://news.yahoo.co.jp/articles/86a83a7c862e5bbdf054079b11247e0154912b9c