夏ドラマ最終回:手堅かったテレビ朝日、民放各局の視聴率動向と秋の展望

2023年夏のドラマシーズンが終盤を迎え、各局の作品が続々と最終回を迎えています。今年は特に高視聴率と呼べるヒット作は少なかったものの、民放各局の間では視聴者の獲得において明暗が分かれる結果となりました。特にテレビ朝日が複数の作品で安定した成績を収めた一方、他局には計算通りの結果とならなかったケースも見受けられます。本稿では、夏ドラマの視聴率を総括し、今後の秋ドラマに向けた展望を考察します。

日本のドラマ・エンターテインメント界を牽引する人気俳優、松本潤と相葉雅紀日本のドラマ・エンターテインメント界を牽引する人気俳優、松本潤と相葉雅紀

夏ドラマ視聴率:テレビ朝日が示した堅実な結果

今年の夏ドラマにおいて、テレビ朝日は「誘拐の日」(火曜午後9時)、「大追跡〜警視庁SSBC強行犯係〜」(水曜午後9時)、「しあわせな結婚」(木曜午後9時)の3作品で堅実な視聴者数を集めました。一方で、他局の一部作品では、事前の期待値に対し視聴率が伸び悩む状況も見られました。近年のテレビ視聴傾向として、プライム帯(午後7時〜11時)におけるPUT(その時間帯にテレビを視聴している人の割合)は年々低下しています。特に2024年までの2年間で1.8%の減少が見られ、動画配信サービスやTVerといったオンデマンド視聴への移行が顕著です。この傾向は、ドラマの視聴率にも直接影響を与え、午後10時台のPUTが午後9時台より約2%低いことも、時間帯による視聴率の差に繋がっています。

プライム帯ドラマ視聴率ランキング(8月第1週〜第4週平均)

2023年夏ドラマのプライム帯(午後7時~11時)全15本中、上位10作品の個人視聴率および世帯視聴率の平均値(8月第1週から第4週まで計4回分、ビデオリサーチ調べ、関東地区を基に算出、小数点2位以下は四捨五入)を以下に示します。

  • (1)TBS「日曜劇場 19番目のカルテ」(日曜午後9時):個人5.7%(世帯9.4%)
  • (2)テレビ朝日「大追跡〜警視庁SSBC強行犯係〜」(水曜午後9時):個人4.6%(世帯8.4%)
  • (3)テレビ朝日「しあわせな結婚」(木曜午後9時):個人3.6%(世帯6.4%)
  • (4)フジテレビ「明日はもっと、いい日になる」(月曜午後9時):個人3.1%(世帯5.3%)
  • (5)テレビ朝日「誘拐の日」(火曜午後9時):個人3.0%(世帯5.5%)
  • (5)日本テレビ「放送局占拠」(土曜午後9時):個人3.0%(世帯5.0%)
  • (7)フジテレビ「最後の鑑定人」(水曜午後10時):個人2.8%(世帯5.2%)
  • (8)フジテレビ「愛の、がっこう。」(木曜午後10時):個人2.5%(世帯4.5%)
  • (8)TBS「DOPE 麻薬取締部特捜課」(金曜午後10時):個人2.5%(世帯4.3%)
  • (10)テレビ東京「能面検事」(金曜午後9時):個人2.4%(世帯5.0%)
  • (10)TBS「初恋DOGs」(火曜午後10時):個人2.4%(世帯4.3%)

このランキングからは、TBSの「日曜劇場」が依然として高い個人視聴率と世帯視聴率を維持していることが分かります。テレビ朝日も複数の作品で安定して上位にランクインしており、堅実な番組制作戦略が功を奏した形です。フジテレビや日本テレビの主要枠も健闘しましたが、視聴率全体で見ると、かつてのような「大ヒット」と呼べる作品は少ない傾向にあります。

秋ドラマへの期待と新たな戦略

夏ドラマの評価を経て、各局はすでに秋ドラマの準備を進めています。視聴者のテレビ離れや多様なコンテンツ消費形態が進む中、高視聴率を狙うには、より一層、ターゲット層を意識した企画力と、SNSや動画配信との連携強化が不可欠となるでしょう。秋ドラマでは、どのようなジャンルやテーマの作品が視聴者の心をつかむのか、そして各局がどのように新たな視聴習慣に対応していくのかが注目されます。ドラマ制作側は、従来のテレビ視聴率だけでなく、TVerでの再生回数やSNSでの話題性など、多角的な指標で作品の価値が測られる時代に対応した戦略を模索していくことになります。

結論

2023年夏ドラマシーズンは、全体として高視聴率作品に恵まれなかったものの、テレビ朝日が安定した視聴者数を確保する堅実な成果を見せました。視聴率の背景には、テレビ視聴スタイルの変化、特に動画配信サービスへの移行が大きく影響しており、これは今後も続くトレンドとなるでしょう。各局は、この変化に適応し、いかに魅力的なコンテンツを提供し続けるかが、秋以降のドラマ戦略における重要な課題となります。

参考資料