時事通信カメラマンの「支持率下げてやる」発言炎上:メディアの自覚なき深刻な問題

自由民主党の高市早苗総裁の取材を巡り、時事通信社のカメラマンが発した「支持率を下げてやる」といった発言が大きな波紋を広げ、メディアの公正性に対する疑念を深めています。元関西テレビ記者で神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は、この一連の出来事に対し、「誰もが情報発信者になれる時代」が久しいにもかかわらず、多くのマスコミ関係者が「自分たちが報じなければ世の中の人は何も知らない」と思い込んでいる、その無自覚な姿勢こそが問題だと指摘しています。この発言は単なる失言ではなく、現代の日本における偏向報道問題、そしてメディアの信頼性に関わる根深い課題を浮き彫りにしています。

「支持率下げてやる」発言、日本中を駆け巡る

問題の発端は2025年10月7日、自民党本部での出来事でした。高市早苗総裁のコメント生中継に備えて日本テレビがライブ配信を始めた際、マイクが偶発的に拾った音声が事態を招きました。「支持率下げてやる」「支持率下げる写真しか出さねえぞ」という衝撃的な発言が、日本全国、さらには世界中に向けて配信されたのです。この発言を受け、インターネット上では批判が殺到。当初は日本テレビの関係者によるものとの疑念も上がりましたが、翌8日、同社は「弁護士ドットコムニュース」の取材に対し、関係者による発言ではないと否定しました。しかし、ソーシャルメディア上では、疑念はなかなか払拭されませんでした。

時事通信社の「雑談」認識が招くメディア不信

事態の収拾を図るべく、翌9日、時事通信社は「本社カメラマンを厳重注意」と題したプレスリリースを発表。藤野清光取締役編集局長は、「雑談での発言とはいえ、報道の公正性、中立性に疑念を抱かせる結果を招いた」とのコメントを公表しました。

時事通信社の本社ビルとロゴ、報道の公正性が問われる背景時事通信社の本社ビルとロゴ、報道の公正性が問われる背景

しかし、この「雑談での発言」という認識こそが、時事通信社、ひいてはメディア全体の危機感の欠如を示していると専門家は警鐘を鳴らします。今回の編集局長を含め、通信社だけでなく新聞社やテレビ局など多くの報道機関が、この発言の深刻さを真に理解していないのではないかという見方です。テレビ局出身の鈴木洋仁准教授自身も、当初は些細なことだと直感したと明かしています。現場ではしばしば見られる光景であり、特にスチール写真を手掛けるカメラマンの間では、今回処分された人物と同様の振る舞いが存在したと指摘し、この「無自覚さ」こそが、偏向報道への批判とメディアに対する信頼失墜の根源にあると深く分析しています。

この一件は、現代のメディアが直面する倫理的課題と、情報過多のデジタル時代におけるジャーナリズムの責任を改めて問い直す機会となっています。報道機関には、自らの役割と社会への影響力を深く認識し、信頼回復に向けた真摯な姿勢が求められています。

参考文献