イラン、イスラエル猛攻で劣勢鮮明 米国圧力増大で体制リスクも

イスラエルからの激しい攻撃に直面するイランは、抵抗を続けているものの、軍事施設の甚大な被害により明らかな劣勢に立たされています。さらに、紛争終結に向けた外交的模索の動きを見せていた米国が軍事介入の可能性を示唆し始めたことで、イラン国内では体制の安定性へのリスクも取り沙汰されるようになりました。この緊迫したイラン情勢において、イランは徹底抗戦を続けるか、あるいは大幅な譲歩に踏み切るかという極めて困難な選択を迫られています。

外交と抵抗の狭間で揺れるイラン

イスラエルからの猛攻を受けるイランは抵抗を継続する一方、ミサイル関連拠点などが大打撃を受け劣勢が際立っています。かつてないほど体制転覆リスクが高まる中、徹底抗戦か大幅譲歩か、対応に苦慮しています。イラン外務省の発表によれば、アラグチ外相は17日、英仏独および欧州連合(EU)の外相らとの電話会談で、現在の紛争激化はイスラエルとその後ろ盾である米国の責任であると強く非難しつつも、外交努力の重要性や交渉の余地を残していると強調しました。

イランのアラグチ外相、ベイルートで撮影(EPA時事、2025年6月3日)イランのアラグチ外相、ベイルートで撮影(EPA時事、2025年6月3日)

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルも、イランが一部のアラブ諸国を経由して、米国やイスラエルに対して敵対行為の停止や核協議再開を呼びかける動きを見せていると報じ、長期化を避けたい思惑が覗えます。

米国の圧力強化とイランの猶予喪失

一方、米国のトランプ大統領は17日、イランとの交渉に消極姿勢を見せた後、SNSで「無条件降伏」を要求。米CNNテレビは、トランプ氏の態度が以前よりも「極めて好戦的に変化」したと伝え、イランに残された外交的あるいは軍事的選択肢の幅は一層狭まり、時間的な猶予が急速に失われつつあることを示唆しています。

イラン国内の徹底抗戦論

国内では徹底抗戦論が根強く、最高指導者ハメネイ師は18日のメッセージで「イランは断じて降伏しない。シオニスト(イスラエル)には罰を与えねばならない」と強く発信。精鋭部隊である革命防衛隊も連日にわたり、イスラエルへの攻撃による「戦果」を強調しています。軍報道官は特に、17日の攻撃で初めて使用された最高性能のミサイルが迎撃されなかったと主張し、「この戦争ではあらゆる攻撃能力を動員する。敵の耐久力は必ずや尽きるだろう」と強気の姿勢を崩していません。

現実の軍事消耗と継戦能力への疑問符

しかしながら、イランが現在のペースで軍事行動をどれほど長く継続できるかは不透明感が増しています。イスラエル軍の推定では、イランは開戦時におよそ2000発保有していたミサイルのうち約400発を発射済みで、イスラエルによる度重なる攻撃の結果、イランが保有するミサイル発射装置のおよそ4割が破壊されたとされます。現実的な消耗は明らかであり、継戦能力には疑問符がついています。

イスラエルの妥協なき姿勢

一方、イスラエルネタニヤフ首相は、外交的な手段による事態の収拾提案を「イランに再び死をもたらす兵器を製造させるだけだ」として完全に拒否しています。イスラエルイラン攻撃の主要な目的として掲げている、核兵器やミサイルの開発阻止といった目標を完全に達成するまで、一切の妥協に応じないという強硬な姿勢を示しており、この点もイラン情勢の打開を一層困難にしています。

まとめと展望

このように、イランはイスラエルからの軍事的圧力に加え、米国の強硬な姿勢という二重の課題に直面しています。国内には徹底抗戦を主張する声がある一方で、現実の軍事力は消耗しつつあり、外交による活路を見いだそうとする動きも報じられています。徹底抗戦か、体制リスクを冒してでも大幅な譲歩か。イランの指導部は、極めて難しい判断を迫られており、イラン情勢の先行きは依然として不透明な状況が続いています。

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