吉村知事「玉川徹氏は万博出禁」発言の波紋 大阪万博めぐる真意とは

大阪・関西万博の開催を控え、街が盛り上がりを見せる一方で、万博誘致を主導した日本維新の会代表の吉村洋文知事の言動が注目されています。万博という一大事業を抱えながら、なぜ吉村氏は首長と国政政党代表という「二足のわらじ」を履き続けるのか。その背景とともに、物議を醸した「玉川徹氏は万博出禁」発言の真意に迫ります。この発言は、吉村氏の万博やメディアに対する複雑な思いを垣間見せる出来事となりました。

「玉川徹は万博出禁」発言の詳細

事の発端は、2024年3月下旬に大阪府内で開かれた党の会合でのことでした。壇上に立った吉村氏は、テレビ朝日系列の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」のコメンテーター、玉川徹氏について言及しました。

「モーニングショーの玉川徹。いま批判するのはいいけど、入れさせんとこと思って。入れさせてくれ、これ見たいと言っても、モーニングショーは禁止、玉川のところは禁止と言って」

吉村氏のこの発言を映した動画がSNS上で拡散され、大きな波紋を呼びました。

発言の真意と知事の釈明

4月1日、吉村氏は自身の発言を認めました。報道陣から「言論統制にあたらないか」との指摘に対し、吉村氏は自身の権限には限界があることを強調しつつ釈明しました。

「僕自身が『出禁』にする権限がないのは、当然のこと。そんなことはあり得ないという前提での発言だ」

一方で、万博への批判や課題指摘は「報道機関として当然あるべき姿」としながらも、玉川氏やモーニングショーに対して苦言を呈しました。

「非常に偏りすぎていると思っている。公共の電波でやる以上、ある程度は公平にやってもらいたい。参加する国々からはなぜ批判ばかり日本のメディアは言うんだと聞く」

万博に対する一部メディアの批判的な姿勢、特にモーニングショーの報道内容に対するフラストレーションが発言の背景にあったことを示唆しました。

大阪府知事・日本維新の会代表の吉村洋文氏が演説する様子(代表撮影)大阪府知事・日本維新の会代表の吉村洋文氏が演説する様子(代表撮影)

横山大阪市長の見解

吉村氏と同じく万博協会の副会長を務める大阪市の横山英幸市長も、同日の記者会見でこの「出禁発言」について言及しました。

横山市長は、吉村氏の発言について「フラストレーションがたまって、ああいう発信をされた」との見方を示しました。メディアによる批判報道の必要性は認めつつも、「どんどんしていただいたらいいが、過度にネガティブにやりすぎるのは、それは僕なりにも思いがある」と述べ、吉村氏と同様に、万博に対する過度なネガティブ報道への複雑な胸中をうかがわせました。

結論として、吉村氏の「出禁発言」は、権限を持たない中での感情的な発露であると本人は釈明しましたが、大阪・関西万博という国家的なプロジェクトを巡る政治家とメディアの関係性、そして批判報道のあり方について改めて議論を呼ぶ出来事となりました。

※本稿は、朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書、朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。