俳優の濱尾ノリタカが6月19日、自身のインスタグラムを更新し、出演するNHK連続テレビ小説『あんぱん』からの“退場”について心境を明かした。彼が演じた田川岩男は同日放送の第59回で物語から姿を消し、その描写とともに、やなせたかし氏の絵本との関連性も話題になっている。濱尾は投稿で、岩男という役、そして作品が描く戦争について深い思いをつづった。
連続テレビ小説『あんぱん』とその登場人物
『あんぱん』は、漫画家やなせたかし氏と妻・暢さんをモデルに、戦中から戦後の激動期を生き抜く夫婦の姿を描く物語だ。主人公・若松のぶを今田美桜が、柳井嵩を北村匠海が演じている。濱尾ノリタカが演じた岩男は、物語の中で重要な役割を担う人物の一人だった。
衝撃の第59回放送:岩男の最期
6月19日に放送された『あんぱん』第59回では、岩男が銃撃される壮絶なシーンが描かれた。息を引き取る間際、彼は傍らにいたリン(渋谷そらじ)に対し、「これでいい」と語りかけ、リンの行動を肯定するかのような言葉を残した。その後、八木(妻夫木聡)によって、リンが日本軍のゲリラ討伐で親を射殺されたことへの復讐として、父の形見の銃で岩男を撃ったことが明かされる。八木は涙ながらに、「ぼくの胸はちっとも晴れない」「イワオさんはぼくのやさしい先生でした」と語り、複雑な胸中を表した。
濱尾ノリタカが明かした心境と作品への思い
本編での最期を迎えたことを受け、濱尾ノリタカは自身のインスタグラムで率直な思いを明かした。「オンエアを観て、田川岩男は最期に、父親になれたのかもしれないな、と思いました」と、自身が演じたキャラクターの人生の終着点について考察。「戦争のことを、わかることなんてできないかもしれないけれど、それでも考え続けていかなければならないと思います」と、作品を通じて描かれる戦争というテーマについても言及した。彼はさらに、「ぼくは岩男とリンのことが大好きです。戦争はダメなことで、美しいことじゃない。ありがとうございました」と続け、役への愛情と、戦争に対する明確なメッセージを伝えた。
連続テレビ小説『あんぱん』の撮影現場より、岩男役・濱尾ノリタカとリン役・渋谷そらじの笑顔のオフショット
濱尾の投稿には、リン役の渋谷そらじとの笑顔のオフショットや、やなせたかし氏の絵本『チリンとすず』の写真も添えられていた。
『チリンとすず』との関連性と視聴者の考察
特に注目を集めたのが、やなせたかし氏の絵本『チリンとすず』の写真だ。この絵本は、子羊のチリンが母を殺した狼のウォーに弟子入りし、復讐を遂げる物語。放送中から、岩男とリンの関係性や展開が、『チリンとすず』のウォーとチリンを彷彿とさせるとの考察が視聴者の間で広がっていた。第59回の放送後には、SNS上で「セリフも同じだね」「まじでチリンとウォーの話でしたね…朝からきつい…」「そのままだった」といった声が多く上がり、両作のテーマや構造の類似性が改めて確認され、大きな反響を呼んだ。岩男とリンのエピソードは、『チリンとすず』が持つ「暴力と復讐」という重いテーマを朝ドラでどのように描くか、という点でも議論を呼んでいる。
まとめ
俳優・濱尾ノリタカは、連続テレビ小説『あんぱん』での岩男役の退場に際し、自身のインスタグラムを通じて役への思い、特にキャラクターの「父親像」への到達と、戦争というテーマについて深い洞察を語った。岩男とリンの物語が、やなせたかし氏のもう一つの代表作『チリンとすず』との構造的な関連性を持つことが示唆され、視聴者に強い衝撃と多様な考察を与えている。このエピソードは、『あんぱん』が単なる伝記ドラマに留まらず、やなせ氏の作品世界が持つ普遍的なテーマや、戦時下の複雑な人間関係、そして暴力と赦しといった重層的なメッセージを描き出そうとしていることを示している。
参考文献:
https://news.yahoo.co.jp/articles/92c25e9430b0e9824c9c75d108bbaa325062b587