映画『国宝』が異例のヒットを記録する中、ロケ地の一つである兵庫県の斎藤元彦知事(47)がこの作品に言及し、自身の現状と重ね合わせるかのような投稿を行い、波紋を広げている。県政を巡る様々な疑惑が浮上し、「イバラ道」を歩む知事に対し、SNS上では厳しい批判が殺到しており、その進退が注目されている。
兵庫県知事 斎藤元彦氏、県政を巡る疑惑報道に対応する様子
映画『国宝』の大ヒットと斎藤知事の投稿
6月6日公開の映画『国宝』は、公開からわずか10日で興行収入11.9億円、観客動員数85万人を突破し、大ヒットを記録している。この作品のロケ地の一つとなった兵庫県豊岡市の芝居小屋「出石永楽館」に触れ、斎藤知事は6月16日、自身のX(旧ツイッター)アカウントを更新。「一人の歌舞伎役者の壮絶な人生を描いた壮大な一代記に、どれほど険しい道であろうとも、“己の道”を歩み続ける姿に、私自身、ぐっと感情移入しました」と感想を綴った。この投稿は、知事自身が直面している数々の問題から「険しい道」を歩んでいる現状を暗に示したものとして、「意味深」だと受け止められている。
続く「イバラ道」:斎藤知事を巡る数々の疑惑
斎藤知事が「イバラ道」と表現し得る状況に置かれている背景には、内部告発文書を起点とする兵庫県政を巡る一連の疑惑が存在する。これらの疑惑は、知事のリーダーシップと県政運営に対する信頼を揺るがすものとなっている。
オリンピック・阪神優勝パレード関連資金疑惑
知事を巡る疑惑の一つは、2023年のプロ野球オリックス・阪神優勝パレードの資金集めに絡むものだ。昨年3月に表面化した元県民局長による内部告発文書では、県内の信用金庫への補助金を増額し、その一部をパレードへの寄付としてキックバックさせていた可能性が指摘された。この問題について、昨年10月には市民団体が斎藤知事を刑事告発。兵庫県警は今年6月13日、斎藤知事と片山安孝元副知事を背任容疑で書類送検した。しかし、県議会が設置した特別調査委員会(百条委員会)は今年3月、「キックバックの事実はなかった」と結論付けており、捜査当局の判断と県の調査結果が食い違う状況にある。
選挙運動を巡る公職選挙法違反疑惑
さらに、斎藤知事に関しては、2021年に行われた兵庫県知事選挙における公職選挙法違反の疑いも指摘されている。選挙運動での買収を禁じる同法に抵触した可能性として、県警と神戸地検は今年2月、知事の選挙陣営のSNS運用などを担当したとされる西宮市のPR会社『merchu』や関係先を家宅捜索した。知事側は、SNS運用に金銭を支払った事実は否定しているが、この疑惑の真相も依然として解明されていない。
元県民局長の情報漏洩問題
県が設置した第三者委員会は5月27日、斎藤知事を告発した元県民局長個人の情報が漏洩した問題について報告書を公表した。報告書は、知事の側近であった井ノ本知明元総務部長が情報を漏洩させた事実を認定。さらに、その背後に斎藤知事と片山元副知事からの「指示があった可能性が高い」と結論付けた。第三者委員会の調査に対し、井ノ本氏は知事からの指示があったと証言し、片山元副知事も知事の指示を理由に根回しを指示したと証言するなど、関係者の多くが知事の関与を示唆している。しかし、斎藤知事本人は一貫して指示を否定しており、関係者の証言と知事の主張が対立したまま、問題は解決に至っていない。
高まる圧力と知事の姿勢
これらの疑惑に加え、今年3月には別の第三者委員会が、斎藤知事の言動10件をパワハラと認定するなど、「外堀」は日増しに埋められつつある状況だ。度重なる追及や批判に対し、斎藤知事は会見などで「重く受け止める」といった言及に留まり、自身の進退については具体的な発言を避けている。
映画コメントへのSNS上の厳しい反応
一連の疑惑や調査結果が相次ぐ中で行われた、映画『国宝』に関する斎藤知事の投稿は、SNS上で特に厳しい批判に晒されている。知事が自身の「険しい道」と重ね合わせたかのようなコメントに対し、X(旧ツイッター)ユーザーからは以下のような声が上がっている。
- 「そりゃ斎藤さんは確かに『己の道』を歩んではりますけど、歌舞伎役者の壮大な一代記に自身を重ね合わせて感情移入するのはさすがに厚かましすぎるんとちゃいますかね」
- 「その己の道とやらを振り返ってみたことある? あなたが踏みつけてきた悲しみと憎しみで溢れてるよ」
- 「『どれほど険しい道であろうとも、“己の道”を歩み続ける姿』がご自分だと? さすがに恥ずかしくないですか、、?」
これらのコメントは、知事が置かれている状況と、映画で描かれる主人公の生き方を安易に比較することへの反発を示している。
疑惑の渦中で続く「イバラ道」の行方
刑事告発、書類送検、選挙疑惑、情報漏洩、そしてパワハラ認定など、次々と明らかになる疑惑の中で、兵庫県知事 斎藤元彦氏の「イバラ道」は続いている。本人は潔白を主張しつつも、外部からの圧力や批判は高まる一方だ。映画に自身を重ね合わせた知事のこの「険しい道のり」が、一体いつどのように終わりを迎えるのか、今後の展開が注目される。