コメ価格高騰の背景に複雑な流通網 ~「ブラックボックス」解明なるか~

コメの不足や価格高騰が続く中、その背景として流通経路の複雑さが指摘されています。小泉農相はこの多重的な構造を「ブラックボックス」と呼び、実態解明と改善に乗り出しましたが、今回のコメ騒動の鎮静化につながるかはまだ不透明です。

コメ流通の重層構造

農家が生産したコメ(玄米)は、まずJAなどの集荷業者によって回収されます。次に卸業者に引き渡され、精米された後、スーパーなどの小売業者に配送され、消費者の手に届きます。

「問屋」の役割と中間マージン

卸業者は、問屋や中間業者とも呼ばれ、精米に加え、袋詰めや配送なども担います。小売店に渡るまでに複数の卸業者を経由することがあり、その都度中間マージンが発生し、最終的な店頭価格に影響しているとの見方があります。

PPIHの指摘:「5次問屋」も存在

ディスカウント店を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、コメ流通には「5次問屋」まで存在しうる重層構造があると指摘しました。JAと直接取引する1次問屋に対し、2次、3次問屋は参入障壁が低く、需給が崩れると利益を優先する業者が現れやすいと分析しています。

備蓄米放出の効果と課題

政府は価格安定のため、今年3月以降、約31万トンの備蓄米を一般競争入札で放出しましたが、5月下旬時点で卸業者(問屋)へ渡ったのは11.8万トンにとどまりました。小売業者や外食・中食業者に届いたのはさらに少ない6.4万トンでした。精米能力の限界などから、集荷業者や卸業者で滞留したと考えられます。

直接販売による迅速化

一方、5月下旬に始まった随意契約による備蓄米の売り渡しでは、放出から1週間ほどで店頭に並び始めました。これは、JAや卸業者を通さず、小売業者へ直接渡したことが迅速な流通につながったためです。

日本のスーパー店頭に並ぶ政府備蓄米 - コメ不足解消に向け流通日本のスーパー店頭に並ぶ政府備蓄米 – コメ不足解消に向け流通

コメ価格高騰の背景には、複雑で多重的な流通構造の課題があります。政府の備蓄米放出も、既存の流通網を通す限り滞留が生じやすい実態が判明。小泉農相が目指す「ブラックボックス」の解明と改善が、今後のコメ価格安定につながるか注目されます。

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