参議院選挙に向け、石破総理が公約として掲げた全国民への「一律2万円」現金給付が、地方自治体から強い反発を招いています。特に、給付実務を担う自治体の首長からは、過去の経験を踏まえた懸念の声が相次いでいます。
自治体からの強い反発
大阪府の吉村洋文知事は、過去のコロナ禍での一律10万円給付に触れ、「またやるのか、あの作業。ほとんどの市町村自治体の思いだと思う」と、事務負担への不満を表明しました。
千葉県の熊谷俊人知事もSNSで、「現金給付を発案した国会議員と国家公務員は全員、地方自治体に来て、給付事務に従事してみては」「いつまでも自治体任せだ」、「この無駄で自治体を疲弊させる話にうんざりしている」と痛烈に批判しています。
史上最年少で市長に就任した兵庫県の高島崚輔市長(28)もまた、自身のSNSで疑問を呈しました。「地方自治体は、国の下請けなのだろうか。物価高騰対策をしたいのは理解するが、どうかやり方を考えていただきたい」と投稿。高島市長は、給付金事業が表向き「地方自治体がやりたいと名乗り出た」ことになっていると指摘しながらも、実際には事実上の「強制」に近い形で業務を担わされている現状を訴えました。
兵庫県尼崎市の高島崚輔市長が、一律2万円給付への自治体負担に懸念を示す様子。
さらに、「業務を担うのは結局、市区町村の職員。多くの職員が元の業務を返上して携わったと聞いている」と述べ、「一律の金額の申請を受け付け、振り込む仕事は、国の方でやっていただきたい」「地方自治体は、国の下請けではないはずだ」と、国に主体的な対応を求めました。
2万円の根拠と専門家の分析
自民党の森山幹事長は、2万円の根拠について、年間の食費にかかる消費税を念頭に算出した給付額だと説明しました。しかし、この金額で実際に各世帯の消費税負担を賄えるのか疑問の声も上がっています。
石破首相が公約する一律2万円現金給付の根拠や目的を問うグラフィックイメージ。
関東学院大学経済学部の島澤諭教授は、さまざまな世帯の消費税負担額を試算し、その見解を述べました。島澤教授の試算では、2人以上世帯の一人当たり負担額は約2万290円ですが、単身世帯では約4万9577円に上ります。島澤教授は、「世帯人員が多い勤労者世帯では一人当たりの食費が少なくて済む効果があるため、消費税負担額が少なく見える一方、単身世帯は1人分すべて見なければならず、負担額は大きくなる。結果として、一律2万円だけでは大きく足りない」と指摘しました。
さらに、給付に伴う自治体の事務作業増加についても、「コロナの一律給付から数年経つが、『給付が遅い』『きちんと把握ができていない』『自治体に全部事務負担を押し付けている』など、当時から批判されてきた点が全く改善されていない。自治体の首長がご立腹なのももっともだ」と述べ、この問題が根深いことを示唆しました。「政治家のみなさんは結局決めるだけだ」と、国側の責任を改めて強調しています。
石破首相が打ち出した一律2万円給付は、物価高騰対策として期待される一方で、給付実務を担う地方自治体からは事務負担の重さや過去の苦い経験から強い反発を招いています。また、給付額の根拠についても、世帯構成によっては十分でないとの専門家の指摘もあり、今後、この公約がどのように展開していくか注目されます。