日本の「ばらまき」財政:茹でガエル状態からの脱却と財政破綻のリスク

日本は長らく世界で豊かな国として知られてきましたが、その繁栄に慣れ親しむあまり、「ゆでガエル」のような危機感を失った状態に陥っていると指摘されています。特に、繰り返される無計画な財政出動、いわゆる「ばらまき」政策は、その象徴と言えるでしょう。この状況を打破するためには、財政破綻という強烈な衝撃を経験するしかないのではないか、という厳しい意見も聞かれます。もちろん、財政破綻は甚大な痛みと代償を伴いますが、このまま「ゆでガエル」状態を続けるよりも、最終的には傷が少なく済む可能性も示唆されています。

繰り返される「ばらまき」の現状と背景

近年の日本の政治において、「ばらまき」は常態化しています。2022年夏の参院選では、各政党が物価高対策を名目として、補助金や減税といった有権者の票を意識した政策を公約に掲げました。自民党は国民一人あたり2万円の現金配布などで約3兆円規模の財政出動を提案。対する野党は、食料品を対象とした消費税減税で5兆円、税率5%への引き下げなら10兆円規模の減収となる政策を対抗馬として提示しました。これらは、その財源や政策効果について、本来であればより深い議論が不可欠な規模であるにもかかわらず、十分な検証が行われたとは言い難い状況です。その後に行われた自民党総裁選においても、新総裁に選ばれた高市早苗氏を含む候補者たちが、同様の票目当ての政策競争を展開しました。

一連の財政拡大の端緒となったのは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック下での特別定額給付金でしょう。全国民へ一律10万円が支給され、総額は約12兆8800億円に上りました。これに加え、中小企業や個人事業主向けの持続化給付金、雇用調整助成金なども実施されました。これらコロナ禍対策として有効な側面もあったものの、これを機に財政規律の「タガが外れた」状態となり、その後は毎年3兆円、5兆円といった規模の「ばらまき」が物価高対策や子育て支援などを名目として繰り返され、現在に至っています。コロナ禍以降に累計数十兆円にも及ぶこれらの財政出動が、一体どれほどの効果を上げたのか、あるいはどのような課題を残したのかについて、政府による「検証」はほとんど行われていません。さらに、メディアや国民からも、その検証を求める声はほとんど聞かれないのが実情です。

日本の財政状況と国民が求める経済対策を象徴する手のひらの現金日本の財政状況と国民が求める経済対策を象徴する手のひらの現金

主要国との比較で際立つ日本の特異性

欧米主要国でも、コロナ禍対策として2020年から2021年にかけて財政赤字が急拡大しました。しかし、2022年には概ね赤字が減少傾向に転じています。ウクライナ侵攻などの影響による新たな赤字要因は存在するものの、日本のようにその後も毎年大規模な「ばらまき」を続けている国は他に類を見ません。この点においても、日本の財政運営における「ゆでガエル」状態が、国際社会の中で際立って特異であると言えるでしょう。無検証のまま巨額な支出が繰り返される日本の状況は、持続可能な財政運営に向けた根本的な意識改革と政策転換が急務であることを示唆しています。

結論

日本の「ゆでガエル」状態は、繰り返される「ばらまき」政策と、その効果を検証しようとしない国民的姿勢によって深刻化しています。財政破綻という劇薬的な衝撃を避けるためには、政府、メディア、そして国民一人ひとりが、現在の財政状況と将来への影響を真剣に捉え、支出の検証と財政健全化に向けた具体的な議論を始めることが不可欠です。このまま漫然と現状を維持すれば、取り返しのつかない事態を招くリスクが日々高まっていることを認識すべきでしょう。

参考文献