イスラエルとイランの衝突は20日で1週間を迎えた。イスラエルはその圧倒的な軍事力を背景に戦果を上げている。しかし、明確な出口戦略を示さず、イランの体制転覆まで公言していることに対し、国内では懸念の声も上がっている。
イスラエル、航空戦力でイランを圧倒
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は18日、イランの核兵器と弾道ミサイルの脅威排除のため軍事作戦を開始したと述べ、「一歩ずつ前進している」とした。米国からの高性能兵器供与を受けるイスラエルは、長年の制裁で兵器更新が遅れるイランに対し優位にある。13日にイランへの空爆を開始して以来、核施設やミサイル発射拠点などを次々と空爆し、軍の主要幹部を殺害した。弾道ミサイルの半数近くを破壊したとしている。
英国際戦略研究所の「ミリタリー・バランス2025年版」によると、予備役を含まない兵力はイスラエルが約17万人でイランの3割以下だが、900キロメートル以上を隔てた両国の衝突では、航空戦力やミサイルの性能が重要だ。イスラエルが保有する米国の最新鋭ステルス戦闘機F35は、1979年のイスラム革命前に導入した米戦闘機F14やロシア製の旧型機が主体のイラン側に性能面で勝る。
イランは遠隔から直接攻撃できるミサイルの開発に注力してきた。2023年には初の極超音速ミサイルを公開し、昨年10月のイスラエルへの攻撃から実戦投入している。これに対し、イスラエルは長距離弾道ミサイル迎撃システム「アロー」などで守りを固めており、イランの攻撃の大半を迎撃している模様だ。
ただ、最先端の迎撃システムもイランからの弾道ミサイルを全て防げるわけではなく、19日現在で24人が死亡、838人が負傷した。19日もイランのミサイル攻撃があり、南部ベエルシェバでは病院に着弾した。
テヘランのイラン国営テレビ社屋、イスラエルの攻撃による損傷を片付ける人々(19日)
「体制転覆」発言と「出口戦略なし」の懸念
イスラエルの高官が頻繁に口にするのが、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師の殺害と体制崩壊だ。
ネタニヤフ氏は16日、米ABCテレビのインタビューでハメネイ師の暗殺を排除しない考えを示した。英拠点のイラン反体制派のテレビ局の取材に「あなたたちが自由になる時は近い」と述べ、交戦がイランの体制崩壊につながるとの認識を示した。これらの発言は、軍事的な優位性とは裏腹に、紛争の長期化や地域情勢の不安定化を招きかねないとの懸念を呼んでいる。
イスラエルはイランに対し軍事面で優位を保っているが、指導者暗殺や体制転覆といった強硬な言動は、紛争の終結に向けた道筋、すなわち「出口戦略」が見えない状況を生み出している。この点は、イスラエル国内からも懸念の声が上がっており、今後の展開が注視される。
[出典] https://news.yahoo.co.jp/articles/7e897fabce16183bb9e7d3a299e5acc88d7a3f06