イスラエル南部病院にイランがミサイル攻撃、80人負傷 「戦争犯罪」非難と深まる国内の分断

イスラエル南部の拠点都市ベエルシェバにある病院が19日、イランによるミサイル攻撃を受け、80人が負傷した。この攻撃に対し、現場を訪れたベンヤミン・ネタニヤフ首相やイスラエル外相らは「戦争犯罪だ」と強く非難した。イスラエル国内ではガザでの長期化する戦闘を巡り世論が分断していたが、今回のイランによる病院攻撃は、国民の注目を対イランに向けさせ、分裂した世論を一時的に結束させる狙いもあるとみられる。

攻撃の詳細と被害状況

ミサイルが着弾したのは19日午前7時頃、ベエルシェバ南部で最大規模のソロカ病院だ。軍報道官や病院側の発表によると、ミサイルは研究棟の最上階に直撃し、建物の一部が吹き飛んだ。隣接する外科棟も被害を受け、窓枠が外れ、内部のベッドが外部から見えるほどの損傷が生じた。幸いにも、病院は攻撃前日までに入院患者約600人を地下の防空施設に避難させており、人的被害の大惨事を免れることができた。

現場の証言と避難状況

攻撃発生時、病院近くに住む29歳の男性研修医は、避難していた防空壕内で大きな爆音を聞いた。すぐに病院に駆けつけたところ、病棟の窓ガラスが粉々になっているのを目の当たりにしたという。研修医は「病院が攻撃されるなど、信じられない出来事だ」と衝撃を語った。病院では、負傷者の手当てに加えて、他の病院への入院患者の移送作業に追われた。40歳の女性看護師は、患者たちが攻撃の恐怖でおびえていた様子を振り返り、「早く普段通りの日が戻ってきてほしい」と切実に願った。

イスラエル南部ベエルシェバにあるソロカ病院で、イランのミサイル攻撃被害を視察するネタニヤフ首相イスラエル南部ベエルシェバにあるソロカ病院で、イランのミサイル攻撃被害を視察するネタニヤフ首相

国際法の観点と双方の非難

戦時下における病院の保護は、ジュネーブ条約によって明確に定められている。ネタニヤフ首相は現場視察後、「我々は核施設やミサイル施設といった軍事目標を正確に攻撃している。しかしイランは病院を攻撃したのだ」と述べ、イランの行為を強く批判し、国際法違反である「戦争犯罪」だと非難した。一方、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザでの病院への攻撃も、国際社会から「戦争犯罪」として非難されている状況だ。イランのアッバス・アラグチ外相は19日、自身のSNS(旧ツイッター)で、「イスラエルはガザ地区の病院の94パーセントを破壊した」と主張し、イスラエル側を非難する応酬となった。

イスラエル国内政治への影響

イスラエル社会は、2022年10月に始まったガザでの軍事作戦の長期化やその進め方を巡り、首相への不満や人質解放交渉の遅れなどから、世論が大きく分断されていた。しかし、今回のイランによるイスラエル本土への直接的なミサイル攻撃、特に民間施設である病院への攻撃は、国民の危機感を高め、国内の関心をガザからイランの脅威へと一気に向けさせる効果を生んだ。有力紙マアリブが20日に公表した世論調査では、ネタニヤフ首相が率いる与党リクードの支持率が、ガザでの戦闘開始以降で最も高い水準に上昇したことが明らかになった。これは、国家の安全保障が脅かされた際に、一時的に政権への支持が高まる「ラリー・ラウンド・ザ・フラッグ」効果が働いた可能性を示唆している。

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