英国イングランド北東部で、美容目的のボトックス施術を受けた複数の人が、命に関わるボツリヌス症の症状を訴えていることが明らかになりました。これを受け、英国当局は広範な調査を開始しており、特にボトックスに類似した製品の違法販売や供給に関する疑惑に焦点を当てています。
英保健安全保障庁(UKHSA)が発表した情報によると、先週初の症例が判明して以降、合計28人が美容施術後にボツリヌス症の症状を報告しています。これらの事案は、美容医療における安全性の確保の重要性を改めて浮き彫りにしています。
ボツリヌス症とは:症状とリスク
ボツリヌス症は、ボツリヌス菌が産生する非常に強力な毒素によって引き起こされる神経系の疾患です。この毒素が神経伝達を阻害し、筋肉の麻痺を招きます。
ボツリヌス菌が産生し、美容施術で問題となるボツリヌス毒素の作用を示す図解
UKHSAの保健コンサルタント、ジョアン・ダーク氏は、美容目的で使用されるボトックスや類似製品の有効成分が、この毒素であることを説明し、「認可を持つ施術者にかかることが重要だ」と強調しています。
報告された有害反応には、眼瞼下垂(まぶたが垂れる)、複視(ものが二重に見える)、嚥下障害(飲み込みにくい)、ろれつが回らない、全身の倦怠感などが含まれます。顔面の筋力低下もボツリヌス症の典型的な症状の一つです。
英国国民保健サービス(NHS)の公式サイトによれば、ボツリヌス症は迅速な治療が不可欠な疾患で、全症例における致死率は5〜10%とされています。多くの場合、抗毒素注射などの適切な治療により回復しますが、対応が遅れると、麻痺が呼吸に必要な筋肉まで広がり、生命に関わる危険性があります。
調査の現状と製品汚染の可能性
現在、これらのボツリヌス症発症の原因については詳細な調査が進められています。UKHSAは、現時点までの証拠では、使用された製品自体が汚染されていた兆候は見られないと発表しています。
症状は、施術を受けてから数日後から最長で4週間後に報告されているケースが多いとのことです。
違法販売に関する捜査
また、英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)はCNNに対し、イングランド北東部におけるボトックス類似製品の違法な販売および供給に関する疑惑について、別途調査を開始していることを明らかにしました。MHRAはこの問題を非常に深刻に受け止めていると述べています。
MHRAは英国国民に対し、美容施術後に副作用が発生した場合や、偽造品の疑いがある製品に関する情報を持っている場合は、積極的に保健当局に報告するよう呼びかけています。
イギリスで発生している美容ボトックス関連の重症ボツリヌス症の多発は、施術を受ける場所や使用される製品の選択がいかに重要であるかを示唆しています。命に関わるリスクを避けるためにも、必ず国の認可を受けた医療機関や資格のある専門家による施術を選択し、安易な価格や出所不明な製品に注意を払う必要があります。不審な症状や製品に関する情報があれば、速やかに保健当局や医療機関に相談することが推奨されます。
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