冷戦終結30年 ロシア識者に聞く「現代の危機、冷戦以上」





モスクワ大学のクバルジン教授
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 ブッシュ(父)米大統領とソ連共産党のゴルバチョフ書記長が冷戦終結を宣言したマルタ会談から30年。ロシアにとっての会談の意義を識者に聞いた。(モスクワ 小野田雄一)

 クバルジン・モスクワ大教授(政治学)

 マルタ会談当時、ポーランドや東ドイツ、チェコスロバキアなど共産圏では大きな変革が起きていた。会談で重要だったことは、これらの変革が新たな紛争や“熱い戦争”に転化することを防ぎ、冷戦終結の方向を維持することだった。マルタ会談の意味は、これらの変革が秩序立った形で行われていくことをゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が保証したことだ。

 現在の世界は冷戦当時より危険な状態ともいえる。ロシアやイラン、北朝鮮など米国の覇権を拒否する国が増えている。ドローンや超音速兵器など新しい軍事技術が誕生し、人工知能(AI)が軍事転用された場合に何が起きるかも予測できない。

 現代世界は相互不信が広がった危機的な状況だが、主導的な政治家たちは世界の運命に目もくれず、目前の選挙と保身のことしか考えていない。

 ペチャトノフ・モスクワ国際関係大教授(歴史学)

 マルタ会談ではいかなる具体的な合意もなされなかったが、会談の歴史的な意義は大きい。それは冷戦の終結が宣言されたことにとどまらない。

 会談は、ブッシュ(父)米大統領とゴルバチョフ・ソ連共産党書記長の個人的外交関係の始まりとなり、東西ドイツ統一など1990~91年の国際問題の解決に重要な役目を果たした。また、米ソ・米露間の政治を活性化させ、第1次戦略兵器削減条約(START1)や両国の経済的連携の発展にもつながった。

 一方で、否定的な部分もある。ブッシュ氏の行動の遅さや保守主義により、時間が無駄に流れた。また、成果が実現されたときにはゴルバチョフ氏の国内的立場は弱まっており、欧州などに本質的に新しい対等な安全保障システムを構築するチャンスが失われた。



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