アラブが恐れる対岸の原発 イスラエルが攻撃なら放射能汚染も


【地図・写真まとめ】イランで唯一稼働中の原発

 「放射能汚染がこわい。仕事場でも毎日、心配だねと言い合っている」。アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビに暮らす教員、イマーン・タウフィークさん(46)は電話取材にこう語った。「非常時にはUAE政府が対応を指示してくれる」との期待はあるものの、「周囲の人はみんな恐れている」という。

 イランの核施設の多くは内陸部にあるが、南西部には海沿いにブシェール原発がある。1970年代に建設が始まったが、イラン革命の影響で一時中断。その後、90年代にロシアの支援を受けて建設が再開され、2012年からフル稼働している。

 米CNNによると、バーレーンでは非常時の警報のテストが行われ、各地にシェルターも準備された。交流サイト(SNS)では対処法などに関する情報も飛び交っているという。

 ◇飲料水への影響懸念も

 住民の間では飲料水への影響も懸念されている。砂漠が多い湾岸諸国では、水需要の多くを海水の淡水化設備に頼っているためだ。

 ロイター通信によると、飲料水に占める割合はUAEが80%超、カタールに至っては100%だ。仮にペルシャ湾に汚染された水が流出すれば、広範囲に影響が及ぶ恐れがある。

 ブシェール原発では現在もロシア人技術者ら数百人が勤務しており、「イスラエルは攻撃しないだろう」との見方もある。ただ、イスラエルのネタニヤフ首相は19日、地元メディアのインタビューで「すべての核施設を攻撃する」と宣言。軍関係者が「ブシェール原発を攻撃した」と述べたとも報じられた。この発言は後に誤りだったとして撤回されたが、国際社会の緊張が高まった。

 今のところ、原発への攻撃はなく、ほかの核施設でも外部への放射能漏れは確認されていない。だが、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は20日、この原発には数千キロの核物質があり、「(空爆が)直撃すれば非常に多くの放射能が環境に放出される。電力を供給している2本の電線が損傷すれば、炉心の溶融につながりかねない」と警鐘を鳴らした。【カイロ金子淳】



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