米国防総省、日本の防衛費GDP比5%必要と示唆 FT報道と政府否定、波紋広がる

米国防総省は、日本を含むアジア同盟国の防衛支出を国内総生産(GDP)比で5%に引き上げる必要性を示唆しました。これは、北大西洋条約機構(NATO)が検討する新たな目標水準に合わせたものと考えられます。一方で、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、米国が日本に対し具体的にGDP比3.5%への増額を要求したと報じ、日本政府はこの報道を否定するなど、情報が錯綜しています。この日本の防衛費増額を巡る米側の動きは、日米間の懸念事項の一つとなっています。

米国防総省の「GDP比5%」示唆

米国防総省のショーン・パーネル報道官は読売新聞の取材に対し、アジア太平洋地域の同盟国が欧州諸国と同じペースで防衛支出水準を引き上げる必要性を強調しました。これは、NATOが検討しているGDP比5%という新たな防衛支出目標案を念頭に置いたものとみられます。このNATO案は、従来の防衛費を3.5%、軍用道路の改修など防衛関連費を1.5%とする合計5%を目指すものです。パーネル氏は、中国や北朝鮮への対抗上、日本もこの5%目標に足並みをそろえるべきだとの考えを示唆しました。現在、日本政府は2027年度までに安全保障関連費(2022年度の現行約1.8%)を2%に引き上げる計画を進めています。

米国防総省(ペンタゴン)建物の外観、日米防衛費協議に関連米国防総省(ペンタゴン)建物の外観、日米防衛費協議に関連

英FT紙の「GDP比3.5%要求」報道

一方、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、米政権が日本に対し、防衛支出をGDP比3.5%に引き上げるよう具体的に要求したと報じました。この3.5%という数字が、従来の防衛費のみを指すのか、あるいは公共インフラ整備なども含めた広範な安全保障関連費を意味するのかは、報道からは明確ではありませんが、いずれにせよ日本にとっては大幅な増額となります。同紙はさらに、この米側の要求に対し日本側が反発し、7月1日に予定されていた外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の開催が見送られたとも伝えています。報道では、日本側が参院選への影響も考慮した可能性も指摘されています。

日本政府の公式否定と今後の懸念

しかし、日本政府はこのFTの報道内容を否定しています。外務省幹部は、「米側から防衛費増額の要求をされた認識はない」とし、2プラス2の見送りについても「日程調整がつかなかっただけ」と説明しています。その一方で、別の政府高官は「日本だけが増額要求されないはずはない」と述べ、特に今後の米大統領選挙の結果次第では、日本へのさらなる増額要求がある可能性に警戒感を示しています。

総じて、米国防総省はアジア同盟国の防衛支出引き上げ、特に日本に対しGDP比5%の目標水準に言及しました。しかし、具体的な増額要求については英紙報道と日本政府の公式見解が異なります。日本の防衛費を巡る米側からの期待や圧力は今後も続くとみられ、今後の動向が注視されます。