北陸新幹線「敦賀以西」延伸、ルート選定と着工の難航

2025年5月12日、東京都内で開催された北陸新幹線建設促進大会は、「小浜・京都ルート」による新大阪駅までの早期整備を求める決議を採択しました。一方で、石川県の馳浩知事は「米原ルート」を含めた再検討を求める文書を会場で配布するなど、沿線自治体・関係者の間で意見の対立が見られ、一枚岩でない現状が浮き彫りとなりました。

2024年3月16日には、北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業しました。これにより、関西圏や中京圏から石川県・富山県への鉄道移動において、敦賀駅での乗り換えが必要となり、特急列車による直通運転が終了しています。北陸各県が新大阪までの北陸新幹線延伸を急ぐ背景には、この「関西圏との結びつきの弱まり」に対する強い懸念があります。しかし、敦賀駅~新大阪駅間は、いまだ着工に至っていません。

敦賀以西のルート選定を巡る議論の経緯

北陸新幹線が敦賀から新大阪へ向かうルートを巡っては、複数の案が存在し、長年にわたり議論が続けられています。2016年4月27日、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)は、国土交通省に対し、「小浜舞鶴京都ルート」「小浜京都ルート」「米原ルート」の3案について、所要時間、路線延長、概算事業費、需要見込みなどの詳細な調査を実施し、半年程度で報告するよう求めました。

敦賀駅に停車中の北陸新幹線W7系車両。敦賀以西への延伸が待たれる。敦賀駅に停車中の北陸新幹線W7系車両。敦賀以西への延伸が待たれる。

同年12月14日、PTの下に設けられた委員会は、敦賀~京都間については「小浜京都ルート」が適切であるとの結論を含む中間報告をPTに提出しました。これを受け、PTは敦賀~京都間を小浜市を経由するルートとすることを決定しました。しかし、京都~新大阪間については、北回りルートと南回りルートの継続検討が示されるなど、不確定要素が残されました。現在も、米原ルートを支持する意見は根強く存在しています。

主要ルート案の比較と課題

北陸新幹線の敦賀以西ルートとして主に検討されているのは、「小浜・京都ルート」と「米原ルート」です。
小浜・京都ルートの最大の利点は、想定される所要時間が最も短いことです。一方で、建設費が最も高額となり、特に人口密集地である京都市内では大深度地下トンネルの建設が必要となる点が大きな課題です。2025年6月6日には、京都市議会がこの大深度地下トンネル建設に反対する決議を採択するなど、地元での調整が難航しています。京都市内に設置される新駅の位置についても、桂川駅付近とする案と京都駅に対して南北方向に設置する案に絞り込まれていますが、JR西日本社長が京都駅に近い方が望ましいとしつつも、桂川駅付近もやむなしとする見解を示すなど、複雑な状況です。

米原ルートの利点は、建設距離が短く、建設費が最も少ないことです。また、費用対効果(B/C)が最も高いという評価もあります。さらに、中京圏とのアクセスに優れている点も特長です。しかし、3案の中で所要時間が最も長くなることが短所とされています。また、東海道新幹線に乗り入れる場合はJR東海との調整が必須となります。加えて、フル規格で建設された場合、北陸本線がJR西日本から経営分離される可能性があり、沿線自治体の強い反対に直面しています(滋賀県高島市などの例)。

検討の過程では、湖西線をミニ新幹線化したり、フリーゲージトレインを導入したりして活用する可能性も議論されましたが、フル規格での整備に伴う並行在来線の経営分離問題は、地元にとって受け入れがたい懸念材料となっています。

北陸新幹線敦賀以西ルートの候補地の一つである京都駅。駅周辺の建設は課題が多い。北陸新幹線敦賀以西ルートの候補地の一つである京都駅。駅周辺の建設は課題が多い。

まとめ:難航する着工への道のり

北陸新幹線の敦賀~新大阪間の延伸は、北陸地域と関西圏・中京圏との連携強化のために不可欠とされています。しかし、最適なルート選定を巡る沿線自治体間の意見の相違、巨額な建設費、京都市内の難工事や地元合意形成の困難さ、そして並行在来線の経営分離問題など、数多くの課題が山積しており、着工の目処は立っていません。関係各所が一致団結し、これらの難題を克服するための道筋を見つけ出すことが、今後の早期整備に向けた鍵となります。

参考資料

  • 福井新聞電子版 (2025年5月13日付け)
  • NTV (2025年6月13日付け)
  • 北國新聞電子版 (2025年2月20日付け)
  • 滋賀県高島市「広報たかしま(号外)」 (2016年12月22日)
  • Merkmal (https://merkmal-biz.jp/post/95298)