2026年4月より、主に75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」の保険料に、「子ども・子育て支援金」が上乗せされる形で加算が始まります。これは、深刻化する少子化対策の一環として、子どもを育てやすい社会を作るための費用を、高齢者も含めた全世代で広く支え合うことを目的としています。厚生労働省が2025年6月4日に発表した出生数68万6061人という過去最少のデータも、少子化の加速が喫緊の課題であることを示しており、全ての世代にとって無関係ではない問題となっています。
後期高齢者医療保険料への子ども・子育て支援金上乗せに関するイメージ画像
「子ども・子育て支援金」とは何か?
「子ども・子育て支援金」は、政府が加速する少子化に歯止めをかけるために創設する新しい制度です。これは「こども未来戦略」の財源の一部を担うものです。制度の主な目的は、子育て世帯への支援を強化することにあります。具体的には、児童手当の拡充や、保育サービスなどの子育て関連サービスの質の向上を目指し、全体として子育てがしやすい環境を整備していくことを目標としています。この支援金の財源は、2026年4月以降、現役世代を含む全世代の医療保険料に上乗せする形で徴収される仕組みとなっています。
なぜ75歳以上の後期高齢者も負担するのか?
これまでの子育て支援にかかる費用は、主に税金や企業からの拠出金で賄われてきました。しかし、少子化は予想を超えるスピードで進行しており、支援をさらに充実させ、将来にわたって制度を持続可能にするためには、高齢者を含むすべての世代が連帯して費用を分かち合う必要があるとの政府の考えに基づき、今回の措置が取られることになりました。これは、「全世代型社会保障」の実現に向けた一歩とも言えます。
2026年4月からの具体的な負担増額の見込みは?
では、2026年4月から始まる「子ども・子育て支援金」の導入によって、後期高齢者医療制度の加入者の方々の保険料は、具体的にどれくらい増えるのでしょうか。政府が想定している、医療保険料に上乗せされる支援金の総額は、2026年度には約6000億円、2027年度には約8000億円、そして2028年度には約1兆円と、段階的に引き上げられる計画です。この総額を、現役世代の医療保険加入者(健康保険組合、協会けんぽ、共済組合、国民健康保険など)と、後期高齢者医療制度の加入者で分担することになります。
後期高齢者医療制度の加入者1人あたりの負担増額の目安について、こども家庭庁の資料によると、年収によって異なりますが、2026年度には平均月額200円程度、2027年度には平均月額250円程度、2028年度には平均月額350円程度が見込まれています。
ただし、具体的な個人の負担額は、加入している後期高齢者医療広域連合の保険料率改定状況などによって変動するため、現時点では確定していません。しかし、2026年4月以降、月額数百円程度の子ども・子育て支援金が保険料に上乗せされる予定であると認識しておくことが重要です。
こども家庭庁が示す2028年度における単身世帯・年金収入のみの場合の年収別支援金額の目安は以下の通りです。
- 年収80万円の場合: 月額約50円
- 年収160万円の場合: 月額約100円
- 年収180万円の場合: 月額約200円
- 年収200万円の場合: 月額約350円
- 年収250万円の場合: 月額約550円
- 年収300万円の場合: 月額約750円
これはあくまで目安であり、収入や均等割額の軽減措置の適用状況によって個別の負担額は異なります。
まとめ
2026年4月から、75歳以上の後期高齢者医療制度加入者の保険料に「子ども・子育て支援金」が加算されることが決定しました。これは少子化対策の強化のため、全ての世代で子育て費用を支え合うという「全世代型」の考えに基づくものです。具体的な負担増は年収により異なりますが、多くの加入者で月額数百円程度の増加が見込まれています。今後の動向に注目が必要です。
参考資料
- 厚生労働省 報道発表資料等
- こども家庭庁 資料
- Yahoo!ニュース / LIMO 掲載記事