日本を代表する自動車メーカーであるマツダとスバルは、それぞれ独自の哲学とこだわりを持ち、個性的なモデルラインアップを展開しています。大量生産を追求する大手とは一線を画し、独自の技術や方向性を貫く両社の姿勢は、日本の自動車産業の中でも特異な存在感を放っています。本記事では、これら個性派日本メーカー、マツダとスバルが、それぞれの強みを活かして市場に投入するモデルをカテゴリー別に比較します。ハイブリッド車やSUVといった主要なセグメントにおいて、両社の哲学がどのように反映されているのかを見ていきましょう。
マツダとスバルの比較対象モデルが並んだ写真。アクセラ、XV、CX-5、フォレスターなどが確認できる。
ハイブリッド対決:マツダ アクセラ vs スバル XV
スバルのXVハイブリッドは、旧フィットハイブリッドのパーツを流用しつつ、スバル独自のシステムで構築されたユニークなモデルです。部品は他社サプライヤーから調達しコストを抑えつつも、システム自体は独自に開発されています。これは非常に独創的な手法と言えます。
対するマツダ アクセラセダンハイブリッドは、トヨタ プリウスのシステムをほぼそのまま移植しています。ただし、エンジンにはトヨタ製1.8Lではなく、マツダ独自のSKYACTIV-G 2Lを採用。システムは外部から導入しながらも、基幹となるエンジンは自社開発にこだわる姿勢には、広島本社のプライドが感じられます。
群馬を拠点とするスバルも、自動車業界では「頑固一徹」で知られます。ハイブリッド専用設計ではないXVのシャシーに対し、トランスミッションにモーターを内蔵し、クラッチ制御を新採用するなど、独自のテクノロジーでハイブリッドシステムを成立させている点に、彼らの技術者魂が光ります。
しかし、ハイブリッド車にとって最も重要な指標の一つは燃費性能です。最終的に燃費が優れているかどうかが、その評価を大きく左右します。セダンとSUVというカテゴリーの異なる比較ではありますが、燃費という点ではアクセラHVに軍配が上がります。
一方で、前後輪がメカニカルに連結されたAWDシステムを持つハイブリッドモデルは、現時点ではXVだけです。悪路における高度な走行性能はスバルのAWDならではであり、そこにハイブリッドシステムが組み合わされていることの意義は非常に大きいと言えます。どちらを選ぶかは、燃費か、悪路走破性かという優先順位によって変わるでしょう。
SUV対決:マツダ CX-5 vs スバル フォレスター
マツダCX-5が登場した際、SUVとして待望されていたクリーンディーゼルエンジンが搭載されたことは大きな注目を集めました。このディーゼルモデルは、このクラスのSUVとしては驚異的な燃費性能を実現しており、BMW X3ディーゼルにも匹敵するレベルでありながら、CX-5の方が格段に安価であるという魅力があります。
いっぽう、スバル フォレスターは、直噴ターボエンジンを搭載しています。ガソリンターボらしい低速から高速域までフラットに立ち上がるトルクと、気持ちの良い伸びのある加速性能が特徴です。ディーゼルエンジン車から乗り換えると、ガソリン仕様ならではの静粛性や振動の少なさなど、その質の高い走りに感動を覚える人もいるでしょう。
もちろん、CX-5にもガソリン仕様は存在しますが、パワーバランスを考えると、この対決ではCX-5はディーゼルエンジン車が比較対象としてより適切です。ここでは経済性としての燃費を一旦脇に置き、クルマとしての本質的な価値観で両者を比較してみましょう。経済性だけで判断してしまうと、そのクルマが持つ本当の良さを見失ってしまう可能性があるからです。
CX-5のハンドリングは元々シャープな特性を持っていますが、ディーゼルエンジンの重量が車体中央部に加わることで、逆に大人っぽい落ち着きのある挙動に感じられます。ただ、個人的な好みとしては、シートの背もたれの形状がどうもしっくりこない点が少し残念に感じられます。
それに対してフォレスターは、スバルが長年培ってきたシンメトリカルAWDのバランスの良さが際立ちます。縦置きに配置されたエンジンは、軽量化が難しいトランスミッションをホイールベースの中心近くに配置することを可能にし、優れた前後重量バランスに貢献しています。また、比較的手頃な価格で高い性能を持つ先進運転支援システム「アイサイト」も、フォレスターの大きな魅力の一つです。
設計思想やプラットフォーム、そして独自のAWDシステムの優位性といった点を含め総合的に評価すると、このSUV対決はフォレスターに軍配が上がると言えるでしょう。
ハイブリッドカテゴリーでは燃費性能でアクセラHVが優位性を示し、一方SUVカテゴリーではシンメトリカルAWDや設計思想の面でフォレスターが評価されました。マツダとスバル、それぞれのメーカーが持つ独自の技術や哲学が、比較対象のモデルに色濃く反映されていることがわかります。どちらが優れているかは、追求する性能や重視する価値観によって異なりますが、両社ともに日本を代表する個性派メーカーとして、独自の道を切り開いています。