数学はエンタメ?ドラゴン桜2で学ぶ「数の不思議」と面白さ

三田紀房氏による受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生である土田淳真氏(文科二類)が教育と受験の現状を読み解く連載から、今回は「エンタメとしての数学」に焦点を当てる。数学が単なる学問としてだけでなく、いかに面白く、そして価値のあるエンタメとなりうるのかを探る。数学に苦手意識を持つ人でも、これを機にその隠された魅力を発見できるかもしれない。

素因数分解とゲーム:数遊びの現代版

東京大学現役合格に必要な数学力を鍛える特別講師、柳鉄之助氏が『ドラゴン桜2』で取り入れたのは、LINEを活用した素因数分解の早解き競争だった。素因数分解とは、例えば「27=3³」や「120=2³×3×5」のように、正の整数を素数のかけ算で表すことだ。これは一見単純な計算に見えるが、コンピューターにおける秘密情報の暗号化など、現代社会でも重要な概念として活用されている。

この素因数分解の早解き競争を、実際にゲームとして楽しめるアプリが存在する。QuizKnockが開発した「wallprime(ワルプライム)」だ。画面に表示される数字が書かれた「壁(wall)」を素因数分解(「割る」=prime)していくゲーム形式になっている。過去にサービスが終了した時期もあるが、教育版「WALLPRIME! for Education」として提供されている。このように、数学は工夫次第で、現代的なエンタメとして親しまれる可能性がある。

「全ての数は面白い」ジョークと背理法

そもそも、数字そのものがエンタメの対象となりうる。「全ての数は面白い」ことを数学的に証明できる、という有名なジョークがある。

この論法はこうだ。まず、「面白くない数」が存在すると仮定する。そうすると、「面白くない数」の中で一番小さい数が存在するはずだ。しかし、「面白くない最小の数」という存在自体が、「面白くない数の中で最も小さい」という「面白い性質」を持っている。これは、最初に「面白くない数」が存在すると仮定したことと矛盾する。したがって、「面白くない数」は存在しない、つまり「全ての数は面白い」と結論づけられる。これはあくまで数学ジョークだが、この証明で使われている手法は「背理法」と呼ばれ、高校数学で学ぶ正式な証明方法である。

ドラゴン桜2に登場する数学講師と生徒:難問に挑む授業風景ドラゴン桜2に登場する数学講師と生徒:難問に挑む授業風景

数の不思議:ラマヌジャンと1729

「面白い数」に関する逸話として、インドの数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンとイギリスの数学者ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディの話は特に有名だ。

ある時、ハーディが病気で寝込んでいるラマヌジャンを見舞った際、「乗ってきたタクシーのナンバープレート『1729』は、何の変哲もない面白くない数だった」と話した。これに対し、ラマヌジャンは即座に「それは非常に面白い数です。それは2通りの方法で2つの立方数の和として表せる最小の自然数です(1729 = 1³ + 12³ = 9³ + 10³)」と答えたという。このエピソードはラマヌジャンの非凡な才能を示すものとして語り継がれている。しかし、このような数の性質を楽しむのは、天才数学者だけではない。信号待ちの間に前の車のナンバーを見て「10を作る」計算ゲームをした経験がある人もいるだろう。身近な数字を使った遊びは、アイデア次第で無限に広がる。

オンラインで見つける数学の面白さ

数学を専門としない文系の人でも、「これは面白い」と感じられる数学のテーマはたくさんある。例えば、インターネット上には興味深い数学関連の情報が溢れている。情報の信頼性には注意が必要だが、ウィキペディアのような信頼できるサイトにも面白い項目がある。

その一例が「0.999…」という項目だ。このページでは、0.999…という無限に続く循環小数の性質について詳しく解説されている。そもそも、この一見単純な数字のページが存在すること自体が面白い。そして、0.999…が実は1と等しいという、直感に反する事実について、一般的に広まっている誤解を解きながら解説されている。この項目は、ウィキペディアの中でも特に優れた記事であることを示す「秀逸な記事」に選ばれている。

また、ウィキペディアのパロディサイトである「アンサイクロペディア」に掲載されている「1=2の証明」も、ジョークではあるが、数学の論理の穴を突く面白さがあり、読み応えがある記事だ。これらのトピックは、厳密な数学の理解とは異なる面白さかもしれないが、数学への苦手意識を和らげ、関心を持つきっかけとなる可能性を秘めている。

このように、数学は必ずしも難しい学問としてだけでなく、エンタメとして、あるいは日常に潜む不思議として楽しむことができる。この多角的な視点が、数学をより身近に感じ、学習への意欲を高める一助となるだろう。

【参考資料】
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