電気自動車(BEV)の運用に不可欠な充電カード。特に自宅に充電設備がないユーザーや、長距離移動が多いユーザーにとって、外出先での急速充電は命綱と言えます。バッテリー容量の増加に伴い長距離移動も現実的になった今日、公共の充電インフラ、そしてそれにアクセスするための充電カードの存在はますます重要になっています。しかし今、主要自動車メーカーが提供するEV充電カードの料金が相次いで大幅に値上げされ、多くのEVユーザーに衝撃を与えています。
メーカー系充電カードの値上げ相次ぐ
新車やディーラー系中古車店でEVを購入した際、多くのユーザーがメーカー提供の充電カードを選択します。これはサポート体制や利便性の面でメリットがあるためです。かつては定額・使い放題を売りにするプログラムもあり、EV普及を後押ししてきましたが、近年その状況が大きく変化しています。
メーカー系充電カードとして最も知名度が高かった一つが、日産が提供してきたZESP(ゼロエミッションサポートプログラム)です。特に2016年開始のZESP2は、月額2,000円で日産ディーラーや高速道路SA/PAなどに設置された急速充電器が使い放題という画期的なサービスでした。自宅充電が難しいユーザーにとって、これはEV運用を可能にする大きな理由となりました。しかし、ZESP2は2019年12月に新規受付を終了。現在提供されているZESP3では定額使い放題プランはなくなり、従量課金制に移行し、その料金も引き上げられています。
急速充電器が並ぶ充電ステーションの様子。EVユーザーにとって重要なインフラ
三菱も追随、料金大幅アップ
日産に続き、昨年末には三菱自動車が提供する「三菱自動車電動車両サポートサービス」の料金体系とサービス内容変更が発表されました。こちらもユーザーにとっては厳しい値上げとなりました。スタンダードプランの月会費はこれまでの550円から1100円へと2倍に。さらに、急速充電の利用料金は1分あたり5.5円だったものが、なんと27.5円へと驚異的な5倍にも跳ね上がりました。
電気代高騰とユーザーへの影響
これらの大幅な値上げの背景には、世界的な電気料金の高騰があると考えられます。電気代が上がれば、充電サービスの提供コストも上昇するため、サービス提供側だけの責任とは言えません。しかし、定額使い放題を魅力に感じてEVを購入し、そのプランに頼って運用していたユーザーにとっては、「梯子を外された」あるいは「裏切られた」と感じてしまうのも無理はありません。わずか数年でサービス内容が根幹から変わってしまうことに対し、メーカー側はユーザーへの影響をもう少し慎重に考慮したプラン設計が求められるでしょう。
まとめ
日産、そして三菱によるEV充電カード料金の大幅な改定は、特に自宅充電が難しい層やヘビーユーザーにとって、今後のEV維持コストに直接影響を与える深刻な問題です。電気代高騰という避けられない側面があるとはいえ、メーカーが提供するサービス内容の急激な変更は、EV普及に向けた信頼構築という点で課題を残します。今後、他のメーカーの動向も注目されますが、ユーザーが安心してEVを選べるような、より安定した、あるいは多様な充電サービス体系の構築が望まれます。