西成のドヤで12年暮らす生活保護男性…孤立と「卑屈な独り言」の現実

大阪の西成は「ドヤ街」として知られ、様々な人々が暮らしています。定期的にこの街を訪れるルポライターの視点から、一人の生活保護受給男性の日常を紹介します。彼はドヤの一室で長年を過ごし、独特な生活を送っています。本記事では、その男性との交流を通じて見えてくる孤立と現実について深掘りします。西成のドヤにおける生活保護受給者の暮らしの一端を知ることで、日本の社会が抱える課題への理解を深めることができます。

南海ホテルの住人たち

かつて西成の飯場を辞めた筆者は、「南海ホテル」というドヤで働き始めました。このホテルは1階から4階が日雇い労働者や生活保護受給者のフロアになっており、5階は男性一般客、6階には女性が宿泊していました。様々な背景を持つ人々が同じ屋根の下で暮らしていました。

孤立する「執オジ」の日常

筆者は、南海ホテルの2階に住む一人の男性と少し交流がありました。彼は生活保護を受けながら、8年間、このドヤに住み着いています。その男性、通称「執オジ」は、ほとんどの時間を3畳の部屋に引きこもって過ごしていました。たまに1階のロビーに姿を見せると、共用のパソコンで何かを調べている様子でした。

大阪・西成のドヤにある生活保護男性の部屋の様子大阪・西成のドヤにある生活保護男性の部屋の様子

出会いと死を求める検索

ある日、「執オジ」は筆者に話しかけてきました。「なんかこう、掲示板みたいなものってどうすれば出てくるのかね? 女の人と出会いたくてね。『君の執事になりたい』って書き込みをしたいんだ」と言うのです。以来、筆者は彼のことを心の中で「執オジ」と呼ぶようになりました。「執オジ」には友人がいません。彼のすることがらといえば、週に一度、競馬場へ行くことと、「スーパー玉出」へ買い出しに出かけることだけでした。筆者自身は、生活保護を受けているとはいえ、部屋にこもりきりになるよりは、競馬でも何でも好きなことがあった方が良いと感じていました。

卑屈な現実と筆者の視点

「そうかい。お兄さんもそう思うかい。でも、俺なんて今はお先真っ暗の落ちこぼれさ。馬券を買いに行く以外はずっと部屋にいるだけだ。お前さん、日本では一日何人の人間が自殺するか知っているかい?」と、「執オジ」は卑屈な様子でトランクスにランニング姿のまま筆者に語りかけました。館内には女性もいるため、ズボンくらい穿いてほしいところでしたが、その時の彼には注意する気も起きませんでした。そして、「執オジ」はGoogleの検索窓に「日本 自殺 数」と打ち込んでいるのでした。寂しい気持ちは理解できるものの、他人を巻き込むような言動は正直止めてほしいと筆者は感じました。

結論

この記事で紹介した「執オジ」の姿は、西成のドヤ街、ひいては現代日本社会の一部に存在する孤立や貧困の現実を映し出しています。生活保護を受けながらも社会から隔絶され、限られた人間関係の中で孤独を深めていく人々の存在は、見過ごせない社会的な課題と言えるでしょう。彼のような人々が少しでも生きがいや繋がりを見つけられるような支援や居場所の必要性が改めて浮き彫りになります。

参考資料

https://news.yahoo.co.jp/articles/31db988ad90755bf86a77887b3eb3cdc1832da69