スキャンダル時代の芸能界「個人事務所」の危険性、大手所属への回帰進む背景

近年、芸能人の間では独立し個人事務所を設立する動きが見られましたが、ここへ来てその流れが変わりつつあります。相次ぐ不祥事やトラブルを背景に、「個人事務所」の抱えるリスクが浮き彫りとなり、再び「大手事務所」への所属や業務提携を選ぶタレントが増えているのです。特に、人気グループ『BE:FIRST』のRYOKIこと三山凌輝さんの独立発表と、広末涼子さんの事故後の状況は、このトレンドを象徴しています。

背景:独立ブームから大手回帰へ

2019年に旧ジャニーズ事務所が公正取引委員会から注意を受けて以降、タレントの独立は増加傾向にありました。しかし、最近になって有名人の「不祥事」が続発したことで、状況は一変。大手事務所への回帰が進む新たなトレンドが生まれています。

相次ぐ不祥事と個人事務所のリスク

スポーツ紙記者によると、RYOKIさんの独立は週刊文春に報じられた「1億円結婚詐欺疑惑」が原因であり、実質的には「解雇」に近いと見られています。Rちゃん側が法的措置を示唆しており、今後の泥沼化が予測されています。

昨年8月にはやす子さんへの暴言でフワさんが活動休止、今年1月には性加害報道で中居正広さんが引退、そして4月には交通事故を起こした広末涼子さんが活動休止しました。これらの事例は、個人事務所所属タレントの「不祥事」がいかに大きな問題を引き起こすかを示しています。

広末さんのケースでは、不倫騒動や事故に伴う違約金が約4億円とも報じられています。制作会社ディレクターは、これら3名がいずれも個人事務所所属であったことから、お蔵入りとなった番組や撮り直し映画などの制作費を賠償する能力がなく、制作サイドが泣き寝入りしている状況だと指摘しています。

芸能人の個人事務所リスク 広末涼子さんの交通事故と多額の違約金報道芸能人の個人事務所リスク 広末涼子さんの交通事故と多額の違約金報道

ディレクターは続けて、「こういう事例が続くと、個人事務所のタレントは怖くて使えなくなりますよ」と述べ、個人事務所所属タレントの起用に対する懸念が業界内で高まっていることを示唆しています。

制作サイドが個人事務所タレントを敬遠する理由

キー局プロデューサーによると、そもそも個人事務所のタレントを使うメリットは「さほどない」といいます。よほど優秀なスタッフがついていない限り、「ダブルブッキング」や出演番組の「裏被り」といったスケジュールミスが起こりがちであるためです。

プロデューサーは、メリットとして挙げられるのは「バーター(抱き合わせ出演)」がないことや、出演オファーへの回答が比較的早いことぐらいだと述べています。これらの実務上の問題も、個人事務所所属タレントを敬遠する一因となっています。

大手事務所との提携・所属のメリット

芸能プロ幹部は、独立後も第一線で活躍する俳優の多くが「大手事務所と業務提携している」と打ち明かしています。これは、営業をしなくても名前だけで仕事が回ってくるタレントはごくわずかであり、多くの独立タレントは「円満退所を謳っていても、実は気難しい性格だったり、裏でトラブルを抱えていたりするのではないか?」とオファーを躊躇されがちだからです。

水野美紀さんも大手からの独立後に仕事が激減しましたが、結局、古巣の系列会社と業務提携することで復活を遂げました。

幹部はまた、オーディションの多くが事務所所属でないとエントリーできない現実や、トラブル発生時の対応を考えても、保険として大手と業務提携しておく方が「安心」であると強調しています。

大手事務所に所属していれば、「不祥事」を起こしても復帰できるケースが多いのも事実です。他に稼げるタレントがいれば、一人が活動休止しても事務所は回せます。このため、焦らず復帰に向けてじっくり準備を進めることができます。

反省期間を経て、配信作品や映画で復活を遂げた唐田えりかさんの例も挙げられます。もし弱小事務所や個人だったら、より「きわどい仕事」を引き受けざるを得なかったかもしれない、と幹部は推測します。

結論

「不祥事」一つで即座に活動停止となり得る現代において、タレント自身にとっても、そしてタレントを起用する側にとっても、よほどクリーンかつ実力のある一部を除き、「大手事務所」に所属している方が安心できる時代になっていると言えるでしょう。今後、完全に独立する道を選ぶタレントは減少していく可能性が高いと考えられます。

参考文献