イスラエルとイランの停戦合意は25日、双方がそれぞれ「勝利」を主張する形で維持された。米国のトランプ大統領は同日、オランダのハーグで記者会見し、「戦争は終わった。双方が再び攻撃し合うことはないだろう」と述べた。一方で、イランは核開発を継続する構えを崩しておらず、紛争の火種は残っている。トランプ氏は、イランの核開発問題に関して同国と来週に協議する考えを示し、「合意に署名するかもしれない」と語った。今後は、外交交渉により核問題が進展するのかが焦点となる。
オランダ・ハーグでの記者会見でイランとの停戦終結と核協議の可能性に言及するトランプ米大統領 (2025年6月25日)
停戦維持と双方の「勝利」主張
ロイター通信によると、イランのペゼシュキアン大統領は24日、「イスラエルが始めた戦争をイランが終わらせた」と述べ、「大勝利」を収めたと強調した。対するイスラエルのネタニヤフ首相も「イランの核と弾道ミサイルの脅威を排除した」として、「歴史的な大勝利」をアピールしている。
トランプ氏の発表では、停戦合意の発効から24時間後の日本時間25日午後1時ごろに「公式な停戦」を迎えるとされていた。両国は24日、互いに「停戦合意違反」があったと非難。イスラエル軍がイランを空爆するなど、根深い不信感を露呈した。ただ、トランプ氏がイスラエルに自制を促した後は大規模な攻撃や被害は確認されていない。
米国の仲介と外交交渉への転換
トランプ政権は4月以降、イランと断続的に交渉を続けていたが、イスラエルによる攻撃で一時中断している。米国のウィットコフ中東担当特使は24日、米FOXニュースの番組で、イランと「包括的な和平合意」を目指す方針を明らかにした。既に関係国を通じた協議を始めており、「達成する自信がある」と述べている。中東メディアによると、ペゼシュキアン氏も24日、サウジアラビアのムハンマド皇太子に対し、イランは「国際的な枠組みに基づき、米国と問題を解決する用意がある」と伝えた。
イランの核開発継続姿勢と残る懸念
しかし、核開発を「国家の誇り」と位置づけるイランがどこまで譲歩するのかは見通せない。イランでは、核拡散防止条約（NPT）体制への不信が高まっており、国際原子力機関（IAEA）との協力を見直す動きが加速している。イラン原子力庁の報道官も24日、原子力産業は「国家に根ざしており、止まらない」と述べた。交渉次第では、再び武力衝突が起きる懸念もくすぶっている。
空爆効果の評価と指導者らの警告
また、米CNNテレビなどは24日、米情報機関による初期的な分析結果として、米軍の空爆はイランの核開発を数カ月遅らせる程度にとどまったと報じた。これに対しトランプ氏は25日、報道内容を否定するとともに、イランが核施設を再建すれば再び武力行使に踏み切ると明言した。ネタニヤフ氏も24日のビデオ声明で、イランが核開発を再開した場合、「同じ決意と力で阻止する」と強調した。
イスラエルとイランの停戦は維持されたものの、双方が勝利を主張し、核開発問題は未解決のままだ。米国は外交交渉による包括的な合意を目指す姿勢を示す一方、イランは核開発継続の意思を堅持しており、NPTやIAEAとの関係も緊張している。米情報機関の分析や指導者たちの警告からも、核開発を巡るリスクは依然として高く、今後の外交努力が成功するかどうかが、中東地域の安定にとって極めて重要となる。
