■百害あって一利なし
中国の習近平国家主席を来年春、「国賓」として日本政府が招待する話が進んでいる。だが、習氏の「国賓」は、日本に「百害あって一利なし」である。
そもそも、中国という国は、日本人を明確な理由もなく拘束し、尖閣諸島周辺では日本の領海にずかずか踏み込んでくる。日本周辺でも、自由を求める香港の若者らを抑圧し、多数のウイグル人を「再教育」という名のもとで拷問する。さすがに、なりふり構わない中国に、米国が貿易や人権などで「NO」を突きつけ、その構図は「新冷戦」とも呼ばれるほど緊迫度を増している。こうした中での習氏の「国賓」待遇が、自由民主主義国家の日本にふさわしい行動なのか。
正論1月号は特集「習近平の『国賓』に反対する」でこの点を徹底的に考えた。自らウイグル人の惨状を知り漫画で告発する漫画家、清水ともみ氏の「人権弾圧を許さない」を読んでほしい。ウイグルで今、どんな非道がまかり通っているのか、多くの人が認識できる論考だ。
一方、日本政府ならびに日本企業にとってカチタス社長、平井宏治氏の「必読『米国防権限法』」は見逃せない。中国と漫然と取引を続けることが許されない状況が到来しつつあることを実感させられる。米国の法律だからといって他山の石とすると大やけどする。くれぐれも国益を踏まえた行動が求められる。
今日と似た局面は、戦後の冷戦下にあった。平和ボケの日本はソ連との対峙(たいじ)に腰が据わらず“商人”に徹した結果、米国は中国と手を結び、のちの「ジャパンバッシング」へとつながった。評論家、江崎道朗氏は「日本は米国にとって『頼りになる同盟国』か」で同じ轍(てつ)を踏むべきではない、と警鐘を鳴らす。(安藤慶太)
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