石破政権、少数与党の苦境続く 都議選敗北が参院選に暗い影

2024年の衆院選を経て少数与党内閣となった石破茂政権は、予算案や重要法案の成立に野党の協力が不可欠な状況が続いている。特に2025年度予算では、日本維新の会が求めた高校授業料の実質無償化などを受け入れ、年度内成立へ道筋をつけた。

野党との協調進む法案審議

野党への譲歩を重ねることで、先の通常国会では政府提出法案59本のうち58本が成立した。立憲民主党の修正要求に応じた年金制度改革法など、提出後に野党の主張を取り入れ、修正を経て成立した法案は、前年(2024年)の通常国会と比べほぼ倍増。これは、政権が野党との協議・妥協を通じて法案通過を図っている現実を示している。

予期せぬ状況と「小泉効果」

苦境が続く石破首相だが、意図せぬ政治状況に助けられる場面もあった。3月中旬の首相商品券配布問題で内閣支持率が急落したが、トランプ米政権による4月上旬の自動車追加関税発動などが、対応に追われる首相への批判を和らげた。米価高騰問題では、失言が問題視された江藤拓前農相の更迭に慎重だったが、不信任決議案可決の公算を受け、小泉進次郎氏を農相に起用。小泉農相は政府備蓄米の放出などを矢継ぎ早に行い、世論から評価を得て「小泉効果」で支持率反転の兆しも見られた。
国会で答弁する石破首相国会で答弁する石破首相

結論先送りの課題

先の通常国会で焦点となるはずだった企業・団体献金禁止や選択的夫婦別姓導入については、日米関税協議や物価高問題に国民の関心が集中したこともあり、与野党とも結論を先送りした形だ。

野党不信任案見送りの真意

通常国会最終盤、石破内閣への不信任決議案提出が注目されたが、野党第1党の立憲民主党・野田佳彦代表は見送り。「政治空白回避」を理由とするが、中央大学の中北浩爾教授は「野党の足並みがそろえば提出し、衆参同日選に追い込んだはず。政権を担う準備と覚悟がない表れ」と指摘する。

都議選結果が示す政党情勢

参院選を控え行われた6月22日都議選では、都議会第1党だった自民党が物価高や政治資金問題響き大敗し過去最低議席。小池都知事が特別顧問の都民ファーストが第1党返り咲き、公明党も苦戦し全員当選を逃した。立憲は増、共産は減。国民・参政も複数議席を獲得。自公が沈み、立憲・国民・参政が伸びるという2024年衆院選と同じ構図が見られ、多党化トレンドが鮮明になった。

参院選への影響と今後の見通し

参院選の「先行指標」とされる都議選での自公苦戦は、石破政権内に強い危機感をもたらしている。自民党幹部は「裏金批判や支持層流出が敗因」と分析。中北教授は「都議選結果は24年衆院選と同じく、都市部での組織政党地盤沈下と多党化トレンド継続の証左」と語り、この流れが参院選にも影響する可能性を示唆。政権は厳しい状況で参院選に臨むことになる。

石破政権は少数与党として野党との協調が不可欠な中、都議選での与党敗北は物価高や政治資金問題への国民の不満を改めて浮き彫りにし、迫る参院選へ大きな警鐘となった。政権は今後、さらに厳しい政治運営を強いられる可能性がある。

[出典] https://news.yahoo.co.jp/articles/1d2f5b5bd169eecc025227487713bbf097306e67