世界で最も危険な植物の一つとされる『ジャイアントホグウィード』、和名『バイカルハナウド』が、これまで日本国内で確認されていなかったにも関わらず、このほど札幌市内の北海道大学敷地内で発見された可能性が浮上しています。その強い毒性と驚異的な繁殖力から警戒が呼びかけられており、現在、大学当局による調査と対応が進められています。
発見の経緯と大学の対応
見慣れない植物に異変を感じたのは先月のことです。植物を見つけた川崎映さんは、「当初は、オオハナウドというよく似た植物の『キレハオオハナウド』という品種と思ったのですが、違和感がありました」と語ります。この違和感が、国内未確認の猛毒植物である可能性につながりました。川崎さんはすぐに北海道大学植物園と北海道大学農学部にメールで通報しました。大学側は慎重な姿勢を示し、「バイカルハナウドの可能性を払拭できない」との回答がありました。通報から10日後、再度確認した際には、植物はすでに1メートルほど成長していたといいます。
札幌の北海道大学敷地内で発見された可能性のある猛毒植物バイカルハナウド(ジャイアントホグウィード)とみられる植物
植物の特徴と危険性
バイカルハナウドは、成長すると高さが3〜4メートルにも達する巨大な植物です。鋭いトゲや茎に現れる紫色の斑点が特徴として挙げられます。ポーランドでは、その強力な毒性から『スターリンの復讐』という異名で呼ばれるほど、その危険性が広く知られています。
専門家が語る毒性と繁殖力
東南アジアの植物を中心に研究を行う国立科学博物館陸上植物研究グループの田中伸幸グループ長は、この植物の毒性と繁殖力について詳しく解説しています。バイカルハナウドは「光毒性」と呼ばれる毒性を持ち、樹液が肌に付着した状態で紫外線を浴びると、重度の炎症を引き起こす可能性があります。「植物の中では、強い毒性を持った植物」と田中グループ長は指摘します。基本的に樹液が直接付着しないと炎症は起こらないと考えられますが、この植物は全体に細かい毛が生えており、「触れただけで、毛が折れる。折れたところから汁がつくので…」と、容易に樹液に接触する危険性を示唆しました。
さらに懸念されるのが、その驚異的な繁殖力です。バイカルハナウドは「一個体で2万粒以上の種子を生産する」といわれており、しかもその発芽率が高いことが知られています。種子はかなりの低温下でも発芽できる性質を持つため、現在の確認場所である北海道だけでなく、「あまり南には広がることはないかもしれないが、世界に広がる地域をみると、本州まで広がってくる可能性は否定できない」と、日本国内でのさらなる拡大の可能性についても警鐘を鳴らしています。
現在の状況と今後の懸念
北海道大学の敷地内で発見されたバイカルハナウドとみられる植物は、すでに花の部分は刈り取られていますが、周囲は現在、立ち入り禁止措置が取られています。刈り取りの様子を見ていたという北海道大学大学院の学生は、「慎重に切り取ってるような感じで、しっかり防護して切っていた」と、大学側が細心の注意を払って対応している様子を証言しています。
現時点では、発見された植物が厳密にバイカルハナウドであると確定したわけではありません。大学および関係機関による詳細な調査と遺伝子解析などが進められています。しかし、その疑いが強く持たれていること、そしてこの植物が持つ強い毒性と恐るべき繁殖力を踏まえると、正式な確定を待たずに早期の対策と情報共有が重要となります。国内への定着を防ぐためにも、今後の調査結果と大学の対応が注視されています。