東京商工リサーチの調査によると、2025年1月から5月にかけて「中古車販売店」の倒産が48件に達し、上半期としては過去10年間で最も早いペースとなっていることが明らかになった。この傾向は、業界の信用問題と市場環境の変化が複雑に絡み合って生じている。
中古車販売店の外観、倒産増加の調査に関連
中古車販売業の倒産件数推移グラフ、上半期過去最多を示す
ビッグモーター事件以降の信用失墜
中古車販売店の関係者は「2023年に表面化したビッグモーター(現:BALM)の不正事件以降、業界全体の風向きが変わった」と指摘する。同年6月に公表された特別調査委員会の報告書は、最大手による保険金不正請求などの問題を暴露し、世間に大きな衝撃を与えた。
これ以降、他の販売店でも不正な保険金請求などが次々と発覚。業界全体の信用は著しく低下した。
相次ぐトラブル事例
具体例として、カートップ(東京都板橋区)では、SNS上で「売却代金が支払われない」といった書き込みが多発し、2025年5月19日までに事業を停止、破産手続きに入った。
同時期には、「CARNEL」を運営するWOOROM.(東京都港区)でも「支払ったのに納車されない」「返金に応じない」などのトラブルが浮上。東京商工リサーチの取材では、インターフォンに応答はなく、事業再開の様子は確認されていないという。
市場環境の変化と消費者意識の厳格化
背景には、かつて深刻だった新車の納期遅れや価格上昇があった。半導体不足などの影響で新車納車に数カ月から1年以上かかることもあり、中古車価格は高騰していた。
しかし最近では、新車生産が回復傾向にあるほか、カーシェアやレンタカー需要の拡大も進んでいる。これにより、高額な中古車に対する消費者の目は一層厳しくなっている。
中古車販売は車両の「買取」も行うため、消費者にとっては「売却代金の後払い」や「購入代金の前払い」が発生しうる。このビジネスモデルにおいて、販売店の信用力は極めて重要となる。
東京商工リサーチは「実質賃金が前年同月比で4カ月連続のマイナスとなる(4月は1.8%減)なか、提示金額だけを売りにする販売業者に対する視線は、ますます厳しくなっている」と分析している。