米軍がイランの核施設3カ所に対して実施した6月21日の爆撃について、そのうちの1カ所、中部イスファハンにある施設には大型貫通爆弾「バンカーバスター」が使用されなかった。その理由として、当該施設があまりにも地中深くに建設されており、バンカーバスターが効果を発揮しない公算が大きかったためだと、米軍制服組トップが連邦議会上院議員への説明で明らかにした。
この説明は、ジョセフ・ケイン統合参謀本部議長が6月26日に行ったもので、発言を直接耳にした3人の人物やその要点を伝えられた別の1人が明らかにした。イスファハンの核施設に対して米軍がバンカーバスターを使用しなかった具体的な理由が、軍の制服組トップによって説明されたのはこれが初めてとみられる。米当局者の見方では、イスファハンの地下施設にはイランが備蓄する濃縮ウランの6割近くが保管されており、これらのウランはイランの核兵器製造に必要とされるものだ。
攻撃手段と目的
米軍のB2爆撃機は、イラン中部のフォルドゥおよびナタンズにある両核施設に対して、10発以上のバンカーバスターを投下した。しかし、イスファハンの核施設への攻撃は、潜水艦から発射された巡航ミサイル「トマホーク」によるもののみに限定されていた。
6月26日に上院議員へ行われた機密情報としての説明には、ケイン議長のほか、ヘグセス国防長官、ルビオ国務長官、ラトクリフ中央情報局(CIA)長官が参加した。ケイン議長の報道官は、機密扱いの説明であるとしてコメントを控えている。説明の中でラトクリフ長官は議員らに対し、情報機関の評価として、イランの濃縮核物質の大半はイスファハンとフォルドゥの地下にあるとの見方を伝えたと、米当局者1人が明かした。トランプ政権当局者らは、濃縮済みウランがイラン国内のどこに備蓄されているかという議員からの質問への回答を避けた。
トランプ大統領は6月27日、米軍の攻撃に先立ってイランの核施設3カ所からは何も運び出されていないと改めて主張した。しかし、6月26日に行われた機密説明を受けた共和党議員らは、米軍の攻撃がイランの持つ核物質全てを消滅させたわけではない可能性を認めた。その一方で、そもそもそれは米軍の任務の一部ではなかったとも指摘している。
共和党のグレッグ・マーフィー下院議員はCNNの取材に対し、「任務の目的は、イランが進める核開発プログラムの特定の側面を排除することであり、それらは実際に排除された。核物質を取り除くことは任務に含まれていなかった」と述べている。
攻撃後の状況と衛星画像による分析
米ミドルベリー国際大学院の教授で兵器の専門家であるジェフリー・ルイス氏はCNNに対し、イランがイスファハンの核施設のトンネルにアクセスしたことが衛星画像から確認できると指摘した。
6月26日時点ではイスファハンに一定数の車両が存在しており、6月27日午前までには少なくとも一つのトンネルの入り口から障害物が取り除かれていることが衛星画像で確認されたという。「イランが入り口を封鎖した時点で(高濃度ウランの)備蓄が依然トンネル内にあったとしても、現時点では備蓄は別の場所にあるのかもしれない」とルイス氏は述べている。
イスファハン核施設の衛星画像:攻撃後にアクセスが確認されたトンネル入口
ルイス氏によれば、米企業プラネット・ラブズが撮影した6月27日の追加の衛星画像では、トンネルに続く入り口が再び開いているのが確認できるという。
結論
米軍によるイラン核施設への攻撃は、イスファハンの施設が極めて深部に位置するためバンカーバスターの使用を避け、トマホークミサイルによる攻撃にとどまったことが、軍の制服組トップの説明によって明らかになった。攻撃の主目的はイランの核開発プログラムの特定の側面を無力化することであり、施設内に存在する核物質そのものの破壊や移動は任務に含まれていなかったと、米当局者や議員らは説明している。一方で、専門家は攻撃後の衛星画像を分析し、イスファハン施設へのアクセスや物質の移動の可能性を示唆しており、今後の状況が注目される。