イギリスのあるジムで発生した、女性更衣室における子どもの利用を巡る問題が、SNSを中心に激しい議論を巻き起こしています。この出来事は、公共の場におけるプライバシーと、子連れの親が直面する課題という、より広範な社会問題に光を当てています。
論争の発端となったのは、TikTokユーザーのSafa氏が投稿した動画です。彼女は、デヴィッド・ロイド・ジムの女性用更衣室でサウナの準備をしていた際、6歳くらいの男の子を連れた母親が入室してきた状況に不快感を示しました。特に、母親が息子に対し「前みたいに見たり、指さしたり、笑ったりしないでね」と声をかけたことに、Safa氏は強い「違和感」と気まずさを感じたと述べています。彼女は着替え中であったため、体を隠すように背中を向けたといいます。
Safa氏は投稿に添えられたキャプションで、「一部の親が持つ『(子連れで異性の更衣室に入るのは)当然』という態度にはうんざり」「大人として静かに過ごさせてほしい」と訴え、ジムの公式アカウントにも対応を求めるタグを付けました。この投稿は瞬く間に拡散され、13万回以上再生されるなど大きな反響を呼びました。
ジムの女性更衣室のイメージ。ロッカーやベンチが並び、着替えや身支度をする空間
イギリスには、何歳以上の子どもが異性の更衣室に入ることを禁止する明確な法律はありません。しかし、多くの施設やガイドラインでは、「8歳以上の場合は、性別に合った更衣室を利用すること」が推奨されています。
育児コーチのダニエル・リンドナー氏は、この問題について専門的な見地から解説しています。リンドナー氏は、特にプール利用後など、濡れた子どもの着替えが大変であることや、家族用更衣室が利用できないケースがあるという親側の事情に一定の理解を示しました。しかし同時に、「他の利用者への配慮が最も重要」であり、「できる限り家族用更衣室を利用すべき」だと強く提言しています。
リンドナー氏は、「母親と息子、父親と娘といった組み合わせの場合、家族用更衣室が最適である」と述べ、「女性用更衣室は『女性のための空間』としての意味があり、他の女性が安心して着替えや身支度をできる権利がある」と強調しました。性別によって分けられた空間の目的と、利用者の権利について言及し、単なる着替え場所としてだけでなく、プライバシーや安心感を確保する場としての重要性を訴えました。
この出来事に対するTikTok上のコメント欄は、意見が真っ二つに割れる「論争」の場となりました。一部のユーザーは、「家族用更衣室が使えなかったのかもしれない」「男の子自身に悪気はないだろう」と母親や子どもの立場を擁護する姿勢を見せました。また、「文句を言う側がおかしい」「個室で着替えれば済む話だ」とSafa氏に反論する意見も見られました。
その一方で、「自分の子どもにも、他人が着替えている姿は見せたくない」「家族更衣室を使ってほしい」とSafa氏に共感し、彼女の懸念に理解を示す声も多数寄せられました。過去に同様の経験を持つという女性からは、「10〜11歳くらいの男の子に見つめられたことがあり、結局個室に逃げ込んだことがある」という具体的なエピソードも語られ、更衣室での子どもの存在が他の利用者に与える影響の大きさが浮き彫りになりました。
今回の論争に対し、リンドナー氏は改めて実用的なアドバイスを提供しました。もし家族用更衣室がどうしても利用できない緊急の場合でも、ローブや大きめのタオルを複数枚持参して体を隠す工夫をしたり、施設のスタッフに他の着替え場所がないか尋ねたりするなど、周囲への配慮を怠らないべきだと説いています。そして最後に、「『今、この場所で都合がいいから使う』という考え方は、やはり間違っている」と締めくくり、個人的な都合よりも、公共の場における他者への配慮や、空間本来の目的を尊重することの重要性を改めて強調しました。
今回のイギリスのジムで起きた出来事は、子連れでの公共施設利用における更衣室の問題という、世界中の施設で起こりうる普遍的な課題を提起しています。施設側のルール整備や利用者の意識といった、様々な側面からの検討が必要とされています。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/d1b6076229e82dd4e57aebf0d3f848b64a65fc2e