石川県能登町にある「イカの駅つくモール」は、日本百景に選ばれた九十九湾を望む観光交流センターだ。2020年6月にオープンしたこの施設は、新型コロナウイルスの影響で開業延期を余儀なくされたものの、現在では年間約7万人が訪れる。能登の里海を代表する情報発信拠点として存在感を増している。
2500万円の交付金で誕生した「イカキング」
施設の象徴となっているのが、全長13メートルの巨大イカモニュメント「イカキング」だ。コロナ臨時交付金2500万円を使って建設されたこのモニュメントは、その是非をめぐって賛否両論を呼んだ。
「当初はかなり世間をお騒がせすることになったのですが……」
つくモールの担当者も当時をそう振り返る。
しかし能登町によれば、イカキングの経済効果は約6億円、宣伝効果は約18億円と算出されており、「停滞した観光需要を呼び戻すため、先を見据えた形で建設した」と担当者はその費用対効果に胸を張る。実際、イカキングは瞬く間にSNSでバズり、InstagramやFacebookで「映えスポット」として話題に。今では特定の撮影スポットに順番待ちの列ができるほどで、現場では訪問者が多すぎて「芝が育たない」という嬉しい悲鳴が上がっている。
震災を乗り越えた再開への道のり
順調な滑り出しを見せた施設だったが、2024年1月1日、能登半島地震が発生。店内は30センチほど津波が浸水し、駐車場まで水が押し寄せた。イカキングも津波に飲まれたが、無事に立ち続けた。ただ、遊覧船は完全に岸壁に乗り上げ、館内も大きな被害を受けた。
それでも施設は4月には営業時間を段階的に緩和しながら再開。2025年4月1日からは通常営業に戻り、9時半から17時まで、定休日は水曜日という体制で運営されている。
担当者は「今年5月のゴールデンウィークを境に観光客の方が戻ってきた。8月のお盆は恐怖を覚えるぐらいの満員状態だった」と語る。県内外の人々が被災地に足を運んでいいのか迷う中、「来ていただいて今の能登を見ていただき、お話しすることがすごく力になる」と訪問を呼びかける。






