タイ首相に退陣要求の大規模デモ カンボジア前首相との電話音声流出が発端

タイの首都バンコクで先月28日、大規模な抗議デモが行われ、ペートンタン首相(38)の退陣が求められました。この動きの発端は、隣国カンボジアとの電話会談の音声が流出したことだと報じられています。一体どのような内容だったのでしょうか?この問題は、タイの政治情勢に大きな影響を与え、国民からの反発を招いています。

流出した電話会談の背景

タイとカンボジアの間では、国境地帯で5月に銃撃戦が発生するなど緊張が高まっていました。事態の収拾を図るため、ペートンタン首相はカンボジアのフン・セン前首相と電話会談を実施しました。この会談の音声が一部流出し、その後、フン・セン氏によって全てが公開されたことが、今回の抗議行動の引き金となりました。

電話会談音声流出問題を受け、タイのバンコクでペートンタン首相の退陣を求める大規模デモに参加する市民たち。電話会談音声流出問題を受け、タイのバンコクでペートンタン首相の退陣を求める大規模デモに参加する市民たち。

問題となった通話内容

流出した音声には、ペートンタン首相がフン・セン氏を「おじさん」と呼び、親しげに話す様子が収められていました。さらに、カンボジアとの対立姿勢を崩さないタイ軍の司令官について、首相は「司令官は私の敵だから、彼の話は私たちの意図とは違います。本当に何か望むことがあれば、ぜひおっしゃってください。私が対応しますから」と発言。自国の軍司令官を批判し、相手に対して下手に出るかのような首相の姿勢が、特に大きな波紋を呼びました。

国民からの強い反発

集会に参加した市民からは、首相の発言に対し強い批判の声があがりました。「カンボジアに屈服するかのような彼女の話し方は受け入れられない」、「首相が我々の国を少しも愛していないことが明らかになった」など、自国の軍を敵視し、隣国に迎合するような姿勢への不信感が示されました。タイ軍は国家建設において歴史的に重要な役割を果たしてきたという国民意識がある中で、首相の軍への敬意を欠く発言は許容できないと受け止められています。

専門家の分析と今後の見通し

タイの政治情勢に詳しい筑波大学の外山文子准教授は、今回の問題をこう指摘します。「ペートンタン首相の発言は適切ではありませんでした。タイという国家を作り上げる上で、タイ軍が重要な役割を果たしてきたという歴史的認識がある中で、軍に対して全く敬意を払わないような発言が露呈したことは大きな問題です」。国民感情と軍の立場、そして首相の発言のずれが、今回の抗議デモに繋がったとの見方を示しています。

憲法裁判所の判断に注目

このような状況を受け、タイの上院議員らは先月、憲法裁判所にペートンタン首相の解任を求める訴えを提出しました。この訴えが1日に受理されるかどうかが注目されています。外山准教授は「タイでは憲法裁判所が非常に強い権限を持っています。前任のセター首相も首相としての資格を剥奪されていますから、ペートンタン首相が同じような状況になっても全くおかしくはありません。十分あり得ることです」と述べ、今後の展開を予見しています。憲法裁判所の判断が、ペートンタン政権の命運を握る可能性が高まっています。

カンボジアとの電話会談音声流出をきっかけに、大規模な抗議デモが発生し、首相の解任を求める動きが加速しています。ペートンタン首相は、自国の軍への軽視とも取れる発言が国民の強い反発を招き、憲法裁判所の判断次第では、その政治生命が危機に瀕する可能性も浮上しています。タイの政局は、予断を許さない状況が続いています。

[出典]
(ANNニュース/Yahoo News Japan)