米国による空爆後、一時停戦状態に入ったイランとイスラエルの間で緊張が続く中、アメリカ国内ではある「スリーパーセル」の脅威が囁かれています。このスリーパーセルとは一体何なのか、その危険性はどの程度現実的なのか、米政治に詳しい早稲田大学の中林美恵子教授が解説します。
スリーパーセルの定義とその活動
中林教授はスリーパーセルについて、「社会の中にある程度溶け込みつつ、何かが起こったときにいろいろな活動をする。最悪の場合はテロ行為も含まれるが、そういった形で影響力を及ぼし、そしてその社会の安定性を損なう活動をする人たちのことを指す」と説明します。普段は一般市民として生活しながら、有事の際に活動を開始する潜入工作員を指す言葉です。
米国当局内で報じられた「かつてないほどの脅威」
こうしたスリーパーセルを巡り、アメリカ国内ではCBP(税関・国境警備局)の長官が職員に送ったとされる内部メモの内容が先日報じられました。そのメモには、「現時点では具体的な信憑性のある脅威は無いが、スリーパーセルやイランの支持者が独自に、あるいはイランの要請に従って行動する脅威は、かつてないほど高まっている」と記されていたとされます。
米国で警戒されるスリーパーセルの脅威を示すニュースグラフィック
また、米国による攻撃の数日前に、イランの核施設への攻撃をトランプ大統領が命じれば、イランはアメリカ国内でテロ攻撃を仕掛ける可能性があるとイランが警告していたという報道も出ています。
警告の意図と現実性:専門家の見解
イランはこうした間接的な攻撃を本当に実行しようとしているのでしょうか。中林教授は、「イランはかなり代理勢力を使う国だと有名で、様々なテロ組織を支援してきた。今回の言葉はそうした状況を誇示した可能性」を示唆。一方で、「イランがそれ(間接攻撃)を行って、アメリカを完全な敵に回して戦闘に持ち込みたいというところまで計算、思っているかというところは大きな疑問」とし、その言葉自体が欧米の恐怖心に影響を与え、イランの主張や相手の譲歩を引き出すためのカードとして使われている可能性を指摘します。中林教授は、このような間接的攻撃の可能性を「絶対にないということも証明が難しい」と述べ、言葉上のカードかもしれないし、本当に攻撃する可能性もあるという見解を示しています。
まとめ
このように、スリーパーセルの脅威は米国当局によって警戒されており、特にイランとの緊張が高まる中でその現実性が議論されています。中林教授の分析が示すように、その言葉が単なる牽制球なのか、それとも実際の行動に繋がるのか、予断を許さない状況と言えるでしょう。