近年、街中で「358」という数字のナンバープレートを付けた車を見かける機会が増えています。このナンバーは希望ナンバー制度において抽選の対象となるほどの人気ですが、一見しただけでは特定の語呂合わせなどがあるようには見えません。一体なぜ、これほどまでに多くの人々から選ばれているのでしょうか。
車を新規に購入したり、名義や住所を変更したりする際には、所有者がナンバープレートの下4桁の数字を自由に選べる「希望ナンバー制度」を利用できます。これにより、自身の誕生日や家族の記念日など、思い入れのある数字を設定する人も少なくありません。この制度は自家用・事業用の登録自動車と自家用軽自動車が対象で、事業用軽自動車や二輪車は対象外です。
希望ナンバーには、「抽選対象希望番号」と「一般希望番号」の2種類があります。抽選対象希望番号は特に人気が高く、毎週1回行われる抽選に当選した人のみが取得できます。一方、一般希望番号はその番号がまだ払い出されていなければ基本的にいつでも取得可能です。
抽選対象希望番号には、全国共通で抽選対象となっているものと、特定の地域のみで抽選対象となるものがあります。全国共通の番号は「1」「7」「8」「88」「333」「555」「777」「888」「1111」「3333」「5555」「7777」「8888」の13種類です。数字一文字やぞろ目の人気が高いことが分かります。
特定の地域で抽選対象となっている番号としては、「1122(いい夫婦)」「2525(ニコニコ)」「1188(いいパパ)」などの語呂合わせがよく知られています。例えば「1122」は、登録自動車では品川や横浜など13地域、軽自動車では熊谷や岡山など2地域で抽選対象となっています。また、富士山ナンバーの軽自動車では富士山の標高である「3776」が抽選対象となるなど、語呂合わせや地域の特色を示すナンバーも人気を集めています。
このような状況下で、「358」という数字は、数字一文字でもぞろ目でも、一般的な語呂合わせでもないにも関わらず、全国的に人気が上昇しています。元々は名古屋ナンバーの登録自動車でのみ抽選対象でしたが、2025年5月からは全国の抽選対象ナンバーとなりました。
一般社団法人全国自動車標板協議会が公表した2023年の希望ナンバー人気ランキングによると、「358」は軽自動車部門で第1位、登録車(5ナンバー)部門で第6位、登録車(3ナンバー)部門で第9位にランクインしており、その人気の高さが裏付けられています。
希望ナンバー「358」が付いた自動車のナンバープレートのイメージ
では、なぜ「358」はこれほどまでに人気なのでしょうか。明確な理由は一つに絞れませんが、いくつかの有力な説があります。最も広く知られているのは、縁起の良い数字であるという考え方です。風水学では「3」は金運、「5」は財運、「8」は成功運を象徴するとされ、「358」を合わせることで運気が向上すると考えられています。
また、仏教にまつわる神秘的な数字だという説もあります。例えば、仏教の開祖である釈迦が悟りを開いたのは35歳8ヶ月の時、日本に仏教が伝来したのは西暦538年、真言宗の開祖である空海が亡くなったのは西暦835年など、仏教史における重要な出来事に「3」「5」「8」という数字が関連している点が挙げられます。
さらに、中国の古典文学『西遊記』に登場する主要人物が僧侶の三蔵法師のお供である沙悟浄(3)、孫悟空(5)、猪八戒(8)であることや、江戸幕府の将軍として特に有名なのが3代・徳川家光、5代・徳川綱吉、8代・徳川吉宗であることなど、「358」という数字が様々な文脈で記憶に残る数字として現れることを人気の理由とする人もいます。
これらのエピソード、特に数字の持つスピリチュアルな意味合いについては、『ありがとうの神様』などのベストセラーで知られる作家、小林正観氏が自身の著書などで広めた影響が大きいと言われています。この情報に触れた人々が「358」ナンバーを選ぶケースも少なくないでしょう。
車の所有者は希望ナンバー制度を利用して好みの数字を選ぶ自由があります。しかし、希望ナンバープレートは通常のナンバープレートとは異なり注文生産となるため、交付までに日数を要します。また、特に人気の高いナンバーは抽選に外れる可能性もあるため、希望する際はこれらの点を考慮する必要があります。