アンジャッシュ渡部建、地上波復帰への「険しい道のり」苦悩と決意を語る

YouTube番組「アンジャッシュ渡部がいつか地上波のグルメ番組に出ることを夢見て、ロケハンする番組」が2023年4月にスタートし、今年で3年目を迎えます。チャンネル登録者数は50万人近くに達し、投稿動画の平均再生回数も好調を維持しています。現在、ネット番組への出演が増加しており、「渡部はやはり面白い」という評価が改めて高まっています。しかし、「白黒アンジャッシュ」以外の地上波番組、特にグルメ番組への復帰は依然として遠い現実です。自身の現状と、今後目指すべき道標について、ロケハン番組の撮影現場に密着し、現在の胸中を聞きました。

このロケハン番組が始まったきっかけは、以前から番組でお世話になっている放送作家のカツオさんとの出会いでした。カツオさんは、渡部建氏が出演したABEMAの番組「有田哲平の引退TV」も手掛けています。その番組で渡部氏は、なぜ芸能界を引退せず、活動を再開したのか、その思いを率直に打ち明けました。様々な意見があることは承知の上でしたが、カツオさんはその時の言葉を信じ、共に地上波復帰を目指そうと動き出してくれました。カツオさんが、もう一人の放送作家である西村隆志さんや映像ディレクターの杣俊輔さんらに声を掛け、賛同してくれるスポンサーを探して用意してくれたのが、この「ロケハン番組」だったのです。正直なところ、最初は身構える部分もありました。今でこそファミリーのように感じていますが、カツオさん以外のメンバーは全く知らず、当時はあまり信用していなかったのです。当時の自分は、いくらでもネガティブに演出できてしまう立場でした。「街の人に全く相手にされない渡部」「店に入れてもらえない渡部」「やっぱり渡部は終わったか」といった編集も可能なわけです。そのため、当初の収録ではコミュニケーションもぎこちなかったと言います。

アンジャッシュ渡部建、地上波復帰への思いを語るインタビュー風景アンジャッシュ渡部建、地上波復帰への思いを語るインタビュー風景

それでも番組をスタートさせたのは、カツオさんが集めてくれたメンバーだったことが大きかったからです。信用していなかったというのは少し違い、どういう人たちか分からなかったというのが正しい表現です。しかし、自身の特性を知るカツオさんの人選ならば、「これは一体何だ?」というような酷いことにはならないだろうという信頼はありました。実際に編集された映像を見た時は、良い意味で想像と違っていたと振り返ります。スタッフたちがすごい熱量を注いでくれたことが伝わる映像で、「ああ、この人たちとなら」と感じ、それまであった壁が取り払われたような気がしたそうです。しかし、スタート当初は結果が振るわず、早々に終わっても仕方ないと思うくらい悔しい気持ちもありました。

渡部氏自身、以前に立ち上げた自身のYouTubeチャンネル「渡部チャンネル」が苦戦していた経験があります。YouTubeを甘く見ており、謹慎前は認知度だけはあったこと、そして芸能人のYouTubeブームよりも少し早く始めたことから、「楽勝だろう」とほぼノープランでスタートさせた結果、全く振るわなかったのです。その苦い経験があったため、今回のロケハン番組も「やっぱりな」という思いがあったと言います。しかし、番組を続けていくうちに、徐々に登録者数50万人という目標が見えてきました(取材当時)。口コミのような広がり方だったと感じており、今の反響については、本当に「今でこそ」だと語ります。「さまぁーずチャンネル」やオリエンタルラジオの中田敦彦氏が番組を取り上げてくれたり、スタッフやロケハン先の皆さんの協力があって、今なんとかこのような形になっているのだと感じています。タレントのYouTubeチャンネルが50万人を達成したというのとは、数字の意味が違うと感じているそうです。

ロケハン先での反応も変化しています。スタート時はまだ活動再開からほとんど時間が経っておらず、周囲からどういう視線で見られているのかよく分からなかった状況でした。それから現在にかけて、番組の認知度と自身の露出が増えたことで、以前より笑顔で受け入れてもらえる感覚があると言います。お店にはおおむね撮影許可をもらえている印象ですが、全く相手にされない状況もあるかという問いに対し、「お店の印象が悪くなるからカットしているだけで、全然ありますよ」と明かしました。特にスナックは危険なスポットで、「飲んでけよ」と捕まり、出るに出られなくなることもあるそうです。

アンジャッシュ渡部建のロケハン番組を制作するスタッフたち(撮影風景)アンジャッシュ渡部建のロケハン番組を制作するスタッフたち(撮影風景)

YouTubeやABEMAなどネット番組では「渡部、面白い」と比較的肯定的に迎えられています。それでも、出演すれば厳しい声を受けるであろう地上波にこだわり続けるのはなぜでしょうか。渡部氏は「僕はやっぱりテレビに出たくてこの世界に入って、テレビに育ててもらったんですよね。それに、いまだに地上波で僕を待ってくれているスタッフがいる」と語ります。「テレビはもう無理です。諦めました。ネット配信で頑張ります」と言ってしまうのは簡単ですが、それをしてしまうと自分の中でゴールを見失うような気がするのです。地上波に戻れたら全てが許されるとは思っていませんが、世間的にもまず一つ許容してもらえたと思える、分かりやすいゴールなのではないかと考えています。手応えについては「現状はすごく厳しいです。活動再開から3年半経ってもこの状況なので、気持ちは切れそうです」と率直に語ります。それでもゴールに向かいたいという思いはあるものの、「うまく説明できなくて申し訳ないですが、難しい。言葉にすると、気持ちとちょっと違くなるんですよ」と胸の内を明かしました。

やはりどこかで世間に許してほしい、もう一度お茶の間に戻りたいという気持ちが本音です。グルメ番組ということよりも、もう一度お茶の間で見られるタレントに戻りたい。非常に険しい道のりであることは理解しています。YouTubeやABEMAで人気があるため、その方面の番組からの誘いも多いと思います。ありがたいことに話をいただくことは実際にあります。ある企業が、まだプラットフォームも決まっていない段階から「また一緒に番組をやりたい」と企画を練り、持ち込み先を探してくれたこともありました。ABEMAの「スッパイは成功のもとTV」がその例で、ミツカンさんから「何かやりましょう」と声をかけてもらい実現した番組です。こういったネット方面のオファーは、「ここで十分じゃないか、こっちに転がった方が楽じゃないか」という誘惑にはならないのでしょうか。渡部氏は「ありがたいオファーであって、それを誘惑というのはピンとこないですね。それはそれで全力でやる仕事だし、言ってしまえば現状そっちに転がっていますから」と語ります。「声をかけてもらったことに全力で応える」ことと「地上波を目指す」ことは同じだと考えているそうです。

謹慎前と後で、一番変わったと思うのは何かという問いに対して、「よく言っていることですが、僕、認知はあったんですよ。でも、人気はなかった」と述べました。イベントで集客できるわけでもなく、本やグッズを出しても爆発的に売れるわけでもない、「渡部?知ってるよ」というタレントでした。しかし今は少し違い、街中で「渡部さん!」と肩を叩かれ、ものすごく固い握手をされて「めちゃめちゃ応援してます!」と言われることが増えたと言います。ロケハン番組でも、撮影場所ごとにファンが駆け付けてくれる光景が見られます。これは今までなかったことです。自分自身ではスタイルが変わったとは思わないが、見られ方が変わったのでしょう。「応援してくれる人が増えた気はします。『サインください』は以前もありましたが、『応援してます』は今になってからです」と変化を語りました。

このロケハン番組はグルメがテーマですが、面白く盛り上げる渡部氏のバラエティー力が光っています。芸人仲間やスタッフが彼と一緒に何かをやろうとするのも、渡部氏が面白いからだと考えられます。しかし、謹慎前の渡部氏は「面白がられること」を避けていたイメージがあります。「なるべくそういうところから避けて、情報番組ばかり。お笑いのバラエティーはほとんど出ていない状態でしたね」と認めます。それが「渡部建」として成り立っていたため、それが良いと考えていました。しかし今は「いじられてなんぼ」。これを受け入れていくしかないと考えています。以前もオファーさえあればバラエティーも全力でやる気はありましたが、オファーがなかったということは、自分がそういう風に見られる空気を出していたのでしょう。笑いは好きだが、笑われる自分は好きではなかったのかという問いには、「僕、笑われるのも嫌いじゃないですよ。でも、笑われる立場にいれなかった。つまり、いじられにくかったんですよね」と分析します。それも、笑ってもらえる場所を避けていた自分のせいだと反省しています。

現在、ネット番組中心ではありますが、出演の場は徐々に増えてきています。これから地上波復帰のために考えている具体的な行動は何かあるのでしょうか。渡部氏は「今は何か考えて動くということは完全に捨てています」と断言します。今の自分が戦略的にやろうとしたら、なおさら受け入れてもらえなくなることは目に見えているからです。「だから同じ答えになりますが、オファーをいただいた仕事はなんであっても死ぬ気でやるだけです」と語気を強めます。その中で、地上波に戻りたいという思いはしっかりと発信していく。まだまだお茶の間は遠いし、成し遂げられないかもしれないというのも本音としてありますが、諦めない姿勢だけは見せ続けることをやめない、諦めない気持ちだけは持ち続けないといけないと考えています。

最後に、アンジャッシュの活動について聞きました。現在、渡部氏は一人でグルメやバラエティーで体を張っています。それはそれで面白いですが、原点はやはりアンジャッシュです。コンビでの活動についてはどう考えているのでしょうか。「これも答えが一緒ですが、僕が戦略的に児嶋(一哉)を口説いても、向こうは乗りませんよ」と現実を見据えます。「客観的に見て、児嶋が今の僕と組むのにメリットは何もないですから」。消極的に聞こえるかもしれませんが、児嶋氏がまた一緒にやろうと言ってくれるように、自分が頑張る姿を見せていく。それしかないと考えています。アンジャッシュの「すれ違いコント」をまた見たいというファンは多くいます。それは児嶋氏にも届いているはずであり、だからこそ心を痛めているだろうと推測します。いつになるのか約束はできませんが、またファンに見せられる日が来ると信じたい、と締めくくりました。

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