トランプ氏、2期目就任後に1億ドル超の債券投資で利益相反の波紋広がる

ドナルド・トランプ米大統領が2期目就任後の1月21日以降、600件以上の債権取引を行い、社債や地方債など計1億ドル(約157億円)以上を購入していたことが、5月19日にオンラインで公開された米政府倫理局の資料で明らかになった。これらの保有資産の中には、第2次トランプ政権の政策転換によって恩恵を受ける可能性のある分野も含まれており、利益相反の懸念が浮上している。

ワシントンD.C.で撮影されたドナルド・トランプ氏。同氏は2期目就任後、1億ドル以上の債券投資を行い、利益相反の議論を呼んでいる。ワシントンD.C.で撮影されたドナルド・トランプ氏。同氏は2期目就任後、1億ドル以上の債券投資を行い、利益相反の議論を呼んでいる。

大規模な債券購入と資産構成の詳細

米政府倫理局が12日付で公表した資料には、個々の取引に関する正確な金額は記されておらず、大まかな内容のみが開示されている。トランプ氏が購入したとされる社債には、米金融大手のシティグループ、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴをはじめ、IT大手のメタ・プラットフォームズ、米半導体大手のクアルコム、ホームセンター大手ホーム・デポ、携帯電話事業大手TモバイルUS、そして医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループといった多岐にわたる企業が含まれている。これらに加え、市、州、郡、学校区が発行する地方債も購入対象となっている。これらの大規模な投資活動は、今後の政権運営における動向と関連付けられ、注目を集めている。

利益相反を巡る批判とホワイトハウスの見解

実業家としての経歴を持つトランプ氏は、自身の事業を子どもたちが運営する信託に既に移管したと説明している。しかし、今年6月に公表された2024年資産報告書では、さまざまな収益が最終的にトランプ氏自身に帰属することが示されており、これが利益相反であるとの批判につながっている。

これに対し、ホワイトハウス高官は、トランプ大統領が投資ポートフォリオに関する義務的な情報開示手続きを継続していることを強調した。また、債券の運用や銘柄選定にはトランプ大統領本人やその家族は一切関与しておらず、これらの債券は独立した第三者の金融機関によって専門的に運用されていると説明し、透明性を確保している姿勢を示した。

専門家による分析と今後の見通し

オックスフォード・エコノミクスで米国主任アナリストを務めるジョン・キャナバン氏は、トランプ大統領の純資産が暗号資産やトランプ・メディアへの集中投資によって大幅に拡大していると指摘した上で、今回の債券購入について見解を述べた。キャナバン氏は「債券購入が、慎重な資産の分散投資以外の何物でもないという証拠はない」としつつも、「主に社債や地方債など、質が高く、格付けの高い債券を購入していたようで、これは単にリスクを少しでも軽減するための手段に過ぎない」との見方を示した。

今回のトランプ氏による大規模な債券投資は、次期政権の政策と個人の経済的利益との関係性について、今後も継続的な議論と監視の対象となるだろう。透明性の確保と利益相反の回避は、公職者にとって常に重要な課題であり、特に大統領の財務状況は厳しく注視される。