華やかな花街として知られる京都祇園では、お座敷に向かう芸舞妓(げいまいこ)を撮影した動画がYouTubeやTikTokなどで数多く公開されています。これらの動画には国内外から好意的なコメントが寄せられる一方で、その陰で撮影行為を巡る深刻な問題が拡大しています。かつては観光客によるマナー違反が中心でしたが、近年は日本在住者と思われる者による悪質な無断撮影行為、さらには「ビジネス」として行われるケースまで出現し、「京都 祇園 舞妓 撮影 問題」は新たな局面を迎えています。本稿では、この問題の現状と、芸舞妓たちが直面している苦悩について詳述します。
京都祇園に広がる撮影動画と問題の背景
祇園の花見小路通り周辺では、10年ほど前から観光客が私有地に侵入したり、芸舞妓につきまとったりする、いわゆる「舞妓パパラッチ」が問題視されてきました。これに対する対策として、昨年5月には祇園南地区協議会が一部の小路に侵入禁止や撮影禁止の看板を設置し、無断侵入には罰金1万円を課すといった具体的な文言が掲出されるに至りました。しかし、こうした対策が取られる一方で、近年表面化しているのは、以前とは異なる層による無断撮影行為の深刻化です。
観光客から日本在住者へ?変質する撮影行為
京都祇園のお茶屋の常連である男性Aさんによると、特にここ2年ほどでYouTuberによる「文化搾取ビジネス」とも呼べる行為が横行しているといいます。これは、芸舞妓につきまとい撮影した動画をYouTubeなどにアップロードし、再生回数を稼ぐことを目的としたグループの出現を指しています。これらの撮影者の一部は外国人であることも判明しているようですが、問題の主体が外国人観光客だけでなく、日本在住者にも広がっている点が指摘されています。残念ながら、立ち入りや撮影が禁止されている場所以外のメイン通り(花見小路)や、個人のマナーに委ねられている公道では、具体的な対策が難しいのが現状です。
京都祇園の通り、芸舞妓への迷惑撮影問題を表すイメージ画像
「文化搾取ビジネス」の実態と芸舞妓への深刻な影響
具体的にどのような被害が発生しているのでしょうか。Aさんによると、公道を歩く芸舞妓を待ち伏せ、執拗に跡をつけて撮影し続けたり、信号待ちの間に至近距離で顔を撮影したりするケースが大半を占めるといいます。中には、細い小道までついていき、部屋に入る直前まで撮影された動画も存在します。こうした過度な撮影行為は、芸舞妓たちのプライバシーを著しく侵害し、精神的に疲弊させています。深刻なケースでは、過度なつきまといに身の危険を感じ、個人で防犯ブザーを携帯し始めた芸舞妓もいるとのことです。
心ないネットコメントが芸舞妓を追い詰める
無断撮影された動画が動画サイトにアップロードされることで、さらなる苦悩が生まれています。ある動画には、足早に歩く舞妓の姿とともに「舞子(原文ママ)さんも大変そうだと思ったら(いいねの絵文字)」といった文言が添えられています。1700近く寄せられたコメントの多くは舞妓に同情的なものですが、中には「無愛想だな」「嫌なら辞めれば?」といった心ない誹謗中傷も見られます。芸妓になるための修行中の身である舞妓は、一般的に10代後半から20代前半のあどけなさの残る少女たちです。こうした動画やコメントに触れることで、深く傷つくケースも少なくないといいます。
京都祇園における芸舞妓への無断撮影問題は、単なる観光客のマナー違反を超え、YouTuberなどによる「ビジネス」として変質し、その影響は当事者である芸舞妓たちの安全と精神に深刻な負担を与えています。公道での対策の難しさもあり、問題の解決には、撮影者側の倫理観の向上と、周囲の理解、そして新たな対策が求められています。