韓国の「休む若者」問題が深刻化:5年間で5兆円超の経済損失、高学歴層にも拡大

韓国では、就職も求職活動も行わず「ただ休んでいる」状態にある、いわゆる「休む若者」の増加が深刻な社会問題となっています。この問題により、2019年から2023年の5年間で推計53兆4000億ウォン(約5兆6818億円)もの経済的損失が発生したとする分析が発表されました。特に2023年には「休む若者」が48万人を超え、統計開始以来過去最多を記録しています。

この分析は、韓国経済人協会からの依頼を受け、昌原大学のイ・ミスク教授が執筆した報告書「休む若者の増加に伴う経済的費用推計」によるものです。報告書は、若年層の労働市場からの離脱が国家経済に与える影響の大きさを浮き彫りにしています。

就職せず休む韓国の若者を表すグラフまたはイメージ画像。経済的損失と社会問題の深刻さを示す。就職せず休む韓国の若者を表すグラフまたはイメージ画像。経済的損失と社会問題の深刻さを示す。

「休む若者」の増加傾向とその背景

報告書によると、「休んでいる」と分類される15歳から29歳の青年人口は、2019年の43万2000人から2023年には48万1000人へと11.3%増加しました。新型コロナウイルス感染症が流行した2020年には一時的に53万8000人に達した後減少しましたが、2023年からは再び増加傾向に転じています。

特筆すべきは、同期間中に青年人口全体が減少しているにもかかわらず、「休む若者」の絶対数と人口比率がともに増えている点です。総人口に対する比率は0.90%から0.93%へ、青年人口に対する比率は5.21%から5.47%へとそれぞれ上昇しており、若年層における労働意欲の低下や、労働市場へのアクセス困難さが構造的な問題として浮上しています。

高学歴層における「休む若者」の拡大

さらに懸念されるのは、大学卒以上の高学歴者が「休む若者」に占める割合が増加していることです。2019年には15万9000人だった高学歴の「休む若者」は、2023年には18万4000人に達し、38.9%の増加となりました。この層が全体に占める割合も36.8%から38.3%に拡大しており、国の人的資源、特に将来の成長を担うべき優秀な人材の損失が深刻化していることがうかがえます。

経済的損失の具体的な推計と影響

報告書では、「休む若者」の賃金水準を就業者と比較し、その経済的損失を推計しています。2023年の就業者の平均月収が217万ウォン(約23万円)であるのに対し、「休む若者」の想定月収は180万ウォン(約19万円)前後(就業者平均の82.7%)と推定されました。このように、高い潜在能力を持つ人材が労働市場に参加しないことで、国家全体の生産性低下や潜在的成長力の喪失という形で、多大な経済的損失が生じていると指摘されています。

問題解決に向けた提言と今後の課題

この深刻な状況に対し、報告書は具体的な対策を提言しています。若者が「休む」状態に陥る前に早期にその兆候を発見し、心理的・社会的な回復支援を提供することが重要であると強調。具体的には、無気力感の克服を支援するプログラムや、雇用と学業を結び付けた「回復型」の労働奨学制度の導入が必要だとしています。

韓国経済人協会のイ・サンホ経済産業本部長は、「『休む若者』が抱える多様な背景を考慮した、個別のニーズに合わせたオーダーメイド型の支援政策が求められる」と述べました。加えて、企業の活力回復、内需振興、規制緩和といったマクロ経済的な施策も並行して進め、若者が安心して新規雇用を創出できる土台を整えることが不可欠であると強調しています。

参考文献

  • 韓国経済人協会 (Korean Economic Association) 報告書「休む若者の増加に伴う経済的費用推計」
  • KOREA WAVE/AFPBB News (2025年8月20日)