【ワシントン=中根圭一、ロサンゼルス=後藤香代】米南部テキサス州で4日に発生した大規模洪水で被害が拡大している原因として、警報システムの不備や避難呼びかけの遅れが挙げられている。気候変動対策を軽視し、国立気象局の職員を削減してきたトランプ政権の対応が影響しているとの見方も出ている。
多くの犠牲者が出た同州カー郡では、急勾配の丘陵地帯を複数の河川が縫うように流れており、大規模洪水の危険性は以前から指摘されていた。全米の国立気象局を管轄する米海洋大気局のデータベースによると、郡内では過去30年間で洪水が100件近く起きている。
4日未明には、2時間足らずで水位と流速が増し、川が氾濫した。就寝中の人が多い時間帯で、危険が迫っていることを事前に知らせる必要があったが、地元当局者は4日の記者会見で、警報システムがなく、避難指示を出していなかったと明らかにした。米CNNによると、郡は9年前に警報システムの導入を検討したが、資金不足で実現しなかったという。
米国では災害時の初動は、政府よりも住民や地域が中心で担うのが一般的な認識だが、今回の洪水は独立記念日に合わせた3連休に発生。現地には、過去の災害状況などに詳しくない観光客も多く訪れていた。警報システムの導入について、グレッグ・アボット州知事は6日の記者会見で「検討すべき問題だ」と述べ、対応の必要性を認めた。
トランプ政権下で設置された米政府効率化省(DOGE)による政府職員の削減が被害拡大につながったとの見方も広がっている。海洋大気局では数千人規模で削減されており、米NBCによると、同州の国立気象局の幹部2人が早期退職していたという。海洋大気局のリチャード・スピンラッド元局長はロイター通信の取材に「人員不足により、正確でタイムリーな予報を提供する能力は低下している」と語った。