「残クレ」で高級車…SNSで話題の夢と現実、潜むリスクに迫る

「頭金ゼロでアルファード買えた」「手取り20万円でもいける!」――自動車の購入方法として広がる「残クレ(残価設定型クレジット)」をテーマに、J-POP調やラップ調で歌う動画が今、YouTubeなどで注目を集めている。収入が多くなくても高級車に乗れるという「夢」にともなうリアルな「あるある」がコミカルに歌われ、カーライフに関心のある若い世代を中心に拡散。中には再生数500万回を超えるものもある。

「残クレ」とは、車両本体価格の一部(残価)を契約時にあらかじめ据え置き、残りの金額を分割で支払う仕組みだ。月々の支払額を抑えられるため、新車をより手軽に入手できる方法として関心が高まっている。しかし一方で、「こんな契約だとは思わなかった」「返却時の条件が厳しすぎる」といった相談が全国の消費生活センターに多数寄せられており、利用にあたっては慎重な検討が求められる。「安く買える」と思い込んでいたのに、契約満了で車を返却する際に高額な追加費用を請求されたり、契約内容を十分に理解しないまま強引な契約を迫られたりするなど、夢と現実のギャップに苦しむ人も少なくない。

残価設定型クレジット(残クレ)で新車を購入するイメージイラスト残価設定型クレジット(残クレ)で新車を購入するイメージイラスト

SNSで拡散「残クレアルファード」動画が映す光と影

YouTubeで「残クレアルファード」などのタイトルで投稿された楽曲動画が人気を博している。約2カ月前に投稿された動画が大きな話題を呼び、類似のコンテンツが次々と生み出されている状況だ。これらの動画では、残クレを利用することで月々の支払いを抑えつつ、アルファードのような高級車に乗る「華やかな」カーライフが描かれている。

その一方で、ローンの返済やガソリン代などの維持費によって生活費が圧迫される苦しい現実や、契約期間満了時に定められた条件を満たせず、思わぬ追加負担が発生する厳しい側面も赤裸々に歌われている。こうした動画は「アルファード」に留まらず、「ヴェルファイア」や「レクサス」といった他の高価格帯の車種にも広がっており、多くのユーザーの共感を呼んでいる。

「残クレ」の仕組みと若年層への広がり

残クレ(残価設定型クレジット)は、車両価格から数年後の推定下取り価格にあたる「残価」を差し引いた金額に対し、ローンを組む仕組みだ。トヨタ自動車の公式サイトなどでは、この方式のメリットとして以下の点が挙げられている。

  • 月々の返済額を少なく抑えられ、支払いの柔軟性が高い
  • 契約から自動車購入までの手続きをスムーズに進めやすい
  • 契約期間中でもライフスタイルの変化に合わせて新しい車に乗り換えやすい

こうした「手軽さ」や支払いの負担軽減から、特に若い世代を中心に利用者が増加している。日本自動車工業会が2019年に行った調査によると、残価設定型クレジットの利用者の約4割が20代以下であり、高価格帯の自動車購入層においては3割弱がこの方法を選択していた。

知っておくべき「残クレ」利用時の注意点と潜むリスク

残クレにはメリットがある一方で、注意すべき点や潜むリスクも存在する。契約期間は一般的に3年から5年で設定されることが多く、契約満了時には原則として自動車を販売店に返却する必要がある。返却にあたっては、事故歴がないこと、定められた走行距離制限を超過していないこと、内外装の状態が良いことなど、厳しい条件が課せられる場合が多い。

これらの条件を満たせない場合は、車両の状態に応じた追加費用を請求されることになる。トヨタ公式サイトでも「1ヶ月あたりの走行距離に制限が設けられている場合があります。超過すると追加料金が発生するため、長距離移動を頻繁に行う方は注意が必要です」と明記されており、利用前に必ず確認が必要だ。

さらに重要な点として、契約時に据え置かれる「残価」に対しても金利がかかるという点を見落としてはならない。もし契約満了時に自動車を返却せず、そのまま乗り続けることを選択した場合、据え置かれた残価分を一括で支払うか、改めてローンを組む(再クレジット)かのどちらかとなる。その際には、まとまった資金が必要になるか、再度ローン金利の負担が発生することになる。