参政党の支持率急浮上:参院選目前、意外な支持層と政治構造の変化

参院選の投開票が7月20日に行われる中、公示日である7月3日に東京・銀座で行われた参政党の神谷宗幣代表の第一声での発言が注目を集めた。神谷代表は演説の中で「申し訳ないけど高齢の女性は子供が産めない」と述べ、これに対し激しい賛否両論が巻き起こったものの、党の支持率への悪影響は限定的と見られている。

参院選を前に演説を行う参政党の神谷宗幣代表参院選を前に演説を行う参政党の神谷宗幣代表

実際、共同通信が7月5日、6日に実施した次期参院選の比例投票先に関する世論調査では、参政党が立憲民主党と国民民主党を上回り、自民党に次ぐ2位に急浮上した。この躍進を受け、今回の参院選で参政党が複数の議席を獲得するのは確実との見方も少なくない。

参政党の台頭と選挙での勢い

参政党は2020年に結党され、2022年の参院選比例区で177万票を獲得した神谷氏が当選し、国政政党となった。2024年の衆院選でも3議席を獲得しており、いわゆる泡沫政党の枠には収まらない存在感を示している。さらに特筆すべきはその地方議員の数で、都議が3人、県議が4人、市町村議に至っては100人を超えている。

当初は国粋主義的な主張や、反ワクチンを筆頭とする陰謀論的な主張が目立ち、「トンデモ右翼」といったイメージを持たれることもあった。しかし、近年は「日本人ファースト」というキャッチフレーズが浸透し、在日外国人に対する排外的な政策へのネット上での広範な支持を集めるなど、党としての存在感を日増しに高めている状況だ。X(旧Twitter)などのSNSでは「消費税の段階的な廃止、選択的夫婦別姓反対、外国人に対する厳しい姿勢を見せている参政党を応援したい」といった投稿が多く見受けられる。

意外な支持層:女性からの広がり

こうしたネット上の声だけを見ると、参政党は伝統的な、あるいは「マッチョ」な有権者の支持を得ているように思われがちだ。しかし、ネットメディアの編集者は「自分が知る限り、参政党を支持する有権者には女性が目立つという特徴があり、これに注目している」と指摘する。

参政党を単なる「トンデモ政党」と捉えている人々は、「選択的夫婦別姓に反対していたり、外国人に対して厳しい態度を見せていたりするので、参政党はマッチョな体質であり、支持者も保守的な中高年男性が大半を占めるのだろう」と考えがちだ。しかし、実際の支持層はそれとは異なる可能性があるという。

女性が参政党を支持する理由

参政党が掲げる政策の中には、反農薬やオーガニック農法推進といったものがあり、これに関心を示す女性は相当数に達している。また、反ワクチンという主張も、単に陰謀論と結びついているというよりは、「家族にコロナを感染させないために自分が打つのは構わないが、子供にワクチンを打たせるのは不安だ」という母親たちの素朴な声に支持されている側面があるようだ。食の安全や子供の健康といった、生活に根差した問題意識が女性の支持につながっていると考えられる。

参政党現象が映し出す日本の政治状況

参政党の急速な躍進は、「ポピュリズム(大衆迎合主義)」に傾きつつある日本の政治状況を色濃く反映している。日本の政治史において、1994年から衆院選に導入された小選挙区比例代表並立制は、大きな「コペルニクス的転回」だったと言える。それまでの中選挙区制では、業界団体の支援を受けた候補者が当選する傾向が強かった。自民党であれば農協や医師会、社会党であれば労組、公明党は創価学会といった具合だ。かつてから「衆愚」と言われるような有権者は存在したが、関係団体や地縁血縁の意向を受けて投票していたため、異常な投票行動に繋がることは少なかったと指摘される。しかし、制度の変更が有権者の投票行動に変化をもたらし、特定の集団や利益団体に縛られない形で、感情や雰囲気、あるいは特定の強い主張に反応する有権者が増加したことが、参政党のような新しいタイプの政党の台頭を許容する土壌となった可能性がある。

結論として、参政党の参院選に向けた勢いは本物であり、共同通信の世論調査が示すように、日本の政治において無視できない存在となっている。その支持層は一見想像されるような層だけでなく、特に食や健康、子育てへの関心が高い女性からの支持も集めている点が特徴的だ。この「参政党現象」は、近年の日本の政治が抱えるポピュリズム傾向や、選挙制度改革以降の有権者行動の変化といった、より大きな構造問題を映し出していると言えるだろう。


参考文献

参院選の台風の目「参政党」が意外な「支持層」を獲得していた…共同通信の世論調査でもまさかの結果に