関電、記者に万博チケット配布 – 報道倫理に疑義

現在開幕中の大阪・関西万博を巡り、ジャーナリズムの独立性と倫理が厳しく問われている。公共性の高い企業である関西電力が、複数の記者クラブに所属する記者に対し、高額な万博の一日券を配布していたことが筆者の取材で明らかになった。この「関電 記者 万博チケット問題」は、報道機関と権力・企業との関係性における深刻な問題を浮き彫りにしている。

大阪・関西万博 会場外観 - 記者の倫理が問われるチケット問題大阪・関西万博 会場外観 – 記者の倫理が問われるチケット問題

確認されたチケット配布の事実

福井県内の報道機関に勤める記者が筆者の取材に対し、関西電力による万博チケット配布の事実を認めた。編集部の質問に対し、関西電力側も「当社グループの事業への理解促進等を目的に、当社が所属する記者クラブの記者へ、先方の意を確認した上で、チケットをお渡ししたことは事実」と回答。具体的には、2025年2月末、関電社員が福井県庁内の県政記者クラブを訪れ、万博一日券(定価7500円)を記者に配布したという。記者は一人当たり2枚を受け取り、受領証にサインが求められた。

広範囲に及んだ配布と記者の反応

関電は配布先や正確な枚数の公表を拒否しているが、地元記者らの情報によると、福井県政記者クラブのほか、原発立地自治体である敦賀市や小浜市の記者クラブ、さらには東京のエネルギー記者会や関電本社の記者クラブ「五月会」でも同様の配布が行われたとされる。ある記者は「不在時に勝手に机に置かれていた」と説明し、受け取りを拒否しづらい状況があったことを示唆した。また、敦賀市通信部に勤務していた共同通信の記者は受領を否定したが、共同通信総務局は後に、同記者が敦賀の記者クラブでチケットを受け取ったことを認めている。

公共性と問われるジャーナリストの倫理

関西電力は電力事業という極めて公共性の高い事業を担っており、公務員と同等の高い倫理性が求められる立場にある。そのような企業が報道機関の記者に対し、高額な万博チケットを配布する行為は、実質的な贈収賄あるいは利益供与と見なされてもおかしくない。チケットを渡す側だけでなく、公共性の高い業務に携わる記者側も、権力や企業からの利益供与を安易に受ける姿勢は厳しく批判されるべきだ。特に、福井県政記者クラブ内でチケット配布が行われた際、関電担当者に対し、この行為に異を唱える記者がいなかったという事実は、記者社会全体の倫理意識について再考を促す。

結論

今回の関西電力による記者への万博チケット配布問題は、報道の独立性が問われる深刻な事例である。ジャーナリストは権力や企業から距離を置き、公平かつ客観的な報道を行う責務がある。高額な利益供与を受け入れる行為は、その信頼性を根底から揺るがしかねない。この一件は、報道機関が自らの倫理規定を徹底し、読者や視聴者の信頼に応えることの重要性を改めて浮き彫りにしている。

参考文献