ソロモン諸島沖、通称アイアンボトムサウンドの海底で、第二次世界大戦中に甚大な損傷を負った米海軍巡洋艦「USSニューオーリンズ」の艦首が発見されました。この発見は、米海軍史上最も注目すべき物語の一つに新たな光を当てるものです。80年以上前、USSニューオーリンズは日本軍の魚雷攻撃を受け、多くの乗組員を失いました。しかし、残った乗組員たちは驚くべき創意工夫で艦を応急修理し、戦域から離脱するという奇跡を成し遂げました。今回発見された艦首は、その壮絶な歴史を物語っています。
ソロモン諸島アイアンボトムサウンドの水深675m地点で発見された、第二次世界大戦時の米巡洋艦USSニューオーリンズの艦首。
海底に沈む艦首の発見
週末に行われたオーシャン・エクスプロレーション・トラストによるノーチラス・ライブでの探索により、この艦首はソロモン諸島のアイアンボトムサウンド、水深675メートルの地点で発見されました。遠隔操作の水中探査機(ROV)を使用し、科学者と歴史学者が艦船の構造、塗装、錨(いかり)の細部を観察。これらの詳細から、発見された艦首がUSSニューオーリンズのものであることが確認されました。探索の模様はウェブサイトで公開されています。
タサファロンガ沖海戦での壊滅的な損傷
1942年11月30日、USSニューオーリンズはガダルカナル島沖のタサファロンガ沖海戦で戦闘に参加しました。この海戦中、同艦の左舷艦首に日本軍の魚雷攻撃を受けました。魚雷の爆発は、ニューオーリンズの前部弾薬庫に引火させ、誘爆を引き起こしました。全長約180メートルの船体のうち、前部5分の1がこの爆発により破壊され、失われました。900人の乗組員のうち、180人以上もの尊い命が失われたと記録されています。
ココナツの丸太と後ろ向きの航海
壊滅的な被害を受けたにも関わらず、ニューオーリンズの乗組員たちは艦内の浸水を防ぐために隔壁を塞ぎ、必死の作業の末、近くのトゥラギ島の港にたどり着きました。米海軍の記録によると、航空攻撃から艦をカモフラージュするため、乗組員たちは驚くべきことにココナツの丸太を使って失われた艦首の代わりに一時的な構造物を作り上げました。ルイジアナ州の国立第二次世界大戦博物館の記述によれば、同艦はこの応急修理された艦首のまま、より本格的な修理を受けるため太平洋を渡りました。特筆すべきは、オーストラリアまでの約2900キロという長距離を、艦尾を先頭に後ろ向きで航行したことです。
専門家が語る後ろ向き航海の困難さ
米退役海軍大佐カール・シュスター氏はCNNの取材に対し、軍艦を後ろ向きにこれほど長距離を移動させる技術の驚くべき難しさについて解説しました。氏は、艦首は波を切り裂くように設計されているのに対し、艦尾はそのようには作られていないため、波によって艦尾が持ち上げられると舵が水中で効かなくなり、操艦が極めて困難になると説明しました。また、艦の前部を失うことで、船体の回転軸となる「ピボット・ポイント(転心)」が大きく変わり、士官たちは艦を安定させ、正しい方向に進めるために、その場で全く新しい操艦方法や命令を学ばなければならなかっただろうと付け加えました。
奇跡の生還とその後の活躍
タサファロンガ沖海戦で示された乗組員たちの創意工夫と適応力は、USSニューオーリンズを救いました。オーストラリアで一時修理を受けた後、同艦は太平洋を横断し(この時は本来の向きで航行)、ワシントン州ピュージェット湾の米海軍造船所で恒久的な修理を受けました。その後、ニューオーリンズはサイパンや沖縄での決戦を含む、太平洋全域の重要な戦闘に参加しました。これらの戦闘は米軍が制空権を獲得し、大日本帝国に最終的な打撃を与える上で極めて重要でした。国立第二次世界大戦博物館によれば、ニューオーリンズは太平洋での海戦により17個の従軍星章を授与されました。これは太平洋戦域の米艦艇の中で3番目に多い数です。
多くの艦船が沈んだ「アイアンボトムサウンド」
USSニューオーリンズの艦首が発見されたアイアンボトムサウンドは、今回の21日間の探索プロジェクトの一環として調査されました。この探索には、米海洋大気局(NOAA)海洋探査、海洋探査協力研究所、ニューハンプシャー大学、海軍歴史遺産司令部が協力しています。第二次世界大戦前はサボ・サウンドと呼ばれていましたが、この海域での激しい戦闘により、連合軍と日本軍双方の膨大な数の軍艦が沈没したことから、兵士たちによって「鉄底海峡(アイアンボトムサウンド)」と呼ばれるようになりました。探索チームによれば、1942年8月から12月にかけて、この海域で五つの主要な海戦が繰り広げられ、その結果、双方合わせて2万人以上の人命、111隻の海軍艦艇、1450機もの航空機が失われたとされています。
今回発見されたUSSニューオーリンズの艦首は、タサファロンガ沖海戦の激しさ、そして乗組員たちの驚異的な不屈の精神を今に伝える貴重な遺物です。アイアンボトムサウンドの海底には、第二次世界大戦中の壮絶な戦いの歴史が静かに横たわっており、今回の発見は、その歴史の一端を改めて浮き彫りにしました。
【出典】CNN / Yahoo News