静岡県浜松市で発生したガールズバーでの殺人事件は、社会に大きな衝撃を与えている。殺害されたのは、店の店長である竹内朋香さん(27)と店員の伊藤凛さん(26)。彼女たちを知る人々は一様に「社交的だった」「仕事を頑張っていた」と語っている。逮捕された常連客の男は、事件後「小馬鹿にされたから…ごめん」と店の関係者に漏らしていたという。この悲劇の背景には、一体何があったのだろうか。
容疑者の執着と事件前の行動
殺人の容疑で逮捕された山下市郎容疑者(41)は、このガールズバーの常連客だった。山下容疑者は、被害者の一人である伊藤さんに対し一方的な好意を抱いていたとされる。
事件発生の2日前、7月4日の午前中、山下容疑者は伊藤さんを引き連れレンタカーを借りていた。その後、2人は熱海で目撃されており、その際、伊藤さんは助けを求めていたという趣旨の連絡が第三者から県警に寄せられている。このことから、伊藤さんは事件直前まで山下容疑者と行動を共にさせられていた可能性が高いとみられている。
事件発生とその動機「LINEのやり取りに怒り」
事件当日、山下容疑者は店内でまず店長の竹内さんを背後からいきなり襲撃した。その後、店の外にいた伊藤さんも刺したとされる。司法解剖の結果、2人にはそれぞれ10か所以上もの刺し傷があったことが明らかになっている。
山下容疑者は容疑を認めており、その供述内容から動機の一端が浮かび上がってきている。「2人(竹内さんと伊藤さん)のスマホのやりとりの内容に怒りを覚えた」といった趣旨の供述をしていると、社会部記者は伝えている。
被害者たちの素顔と人間関係
殺害された店長の竹内さんは、店のオーナーでもある夫と共に、まだ幼い子ども2人を育てていた。
竹内さんの友人は、事件後の夫の様子について「終始淡々と話していて、あまりのショックに感情が追いついていない状態に感じられました。当たり前ですが、まだ小さなお子さんもいて、奥さんをあのような形で失い、混乱されています」と語っている。
友人が竹内さんの夫から聞いた話によると、容疑者が竹内さんのLINEを見たことが事件の原因だったという。伊藤さんに彼氏がいたことや、竹内さんと伊藤さんの間で交わされた「めんどうくさい客だ」といった山下容疑者に関するやり取りを見て、逆上したと聞いているとのことだ。
山下容疑者は去年の10月ごろからこの店に通うようになったという。友人によると、いつから伊藤さんに入れ込んだかは不明だが、伊藤さん目当てで来店していたとのこと。容疑者は見た目も「コワモテ」で、伊藤さんは表面上そう見せずとも、内心では彼を怖いと思っていたと周囲に漏らしていたようだ。
浜松ガールズバー殺人事件の被害者、店長の竹内朋香さん。幼い子ども2人を育てていた。
明るい人柄、店への情熱
亡くなる前、竹内さんは店のブログを頻繁に更新していた。店がオープンしたころのブログには、「こんばんは ブログ初めてで書き方わからないけど頑張って書いて来まーす」といった意気込みが綴られていた。新しい従業員の採用が決まると、「なんととんと今月で新しい女の子が2人も入店してくれました」と喜びを記すなど、店に対する情熱が伺える内容だった。
事件現場からほど近い場所にある飲食店の男性店主は、竹内さんについて「オーナーに連れられてよく来られていた。人付き合いもよく、おいしそうに焼き鳥を食べ、旦那さんと楽しそうにお酒を飲んでいた」と証言している。
この店は、通常楽しんで飲むだけなら1万円台で済む価格帯だったという。料金が高額だったわけではないにも関わらず、常連客によるこのような悲惨な事件が発生し、大切な家族を失った遺族の心情を思うと、かける言葉が見つからないという声も聞かれる。
今回の浜松ガールズバー殺人事件は、常連客の歪んだ好意と、被害者間のプライベートなやり取りを巡るトラブルが悲劇につながった可能性を示唆している。事件の全容解明が待たれる。