日本、G7からの脱退を:負担、リスク、そして代替案

日本はG7から脱退すべきである。ウクライナやイスラエルに関連する戦争、そして米国によるイランへの攻撃。こうした緊迫した国際情勢に対し、G7各国は「我々が世界の秩序を守らねばならない」との強い使命感を持ち、電話会議や首脳会議を重ねている。関税問題についても、実際にはアメリカが unilaterally 行動しているに過ぎないが、G7に加盟しているために、各国は顔を揃えてアメリカを説得しようと試みる。もはや、こういった議論は二国間協議で十分ではないだろうか。日本はG7という白人エリートクラブに名誉白人として参加している形態だが、現状を見れば、ウクライナに対して巨額の資金を提供する「ATM役」としての役割しか果たしていないように映る。

G7参加の負担と日本の現実的な役割

G7は足並みを揃えた連携が重要だと説く。しかし、地理的に遠く、日本の直接的な影響力が及ばない地域の問題に巻き込まれ、資金拠出を強いられるだけでなく、方針に従うことによってリスクさえもたらされかねないのが現状である。ウクライナ支援と対ロシア制裁に同意した結果、いつロシアから攻撃を受けるか分からないというリスクを抱え、さらにホルムズ海峡が封鎖された際の代替エネルギー確保に向け、ロシアと交渉する余地すら失っている。このような状況で、自由な外交の選択肢を失っているのは深刻だ。

G7首脳会議のイメージ:日本が直面する負担と脱退論議G7首脳会議のイメージ:日本が直面する負担と脱退論議

他の枠組みとの比較と脱退の可能性

この混乱に乗じて中国が台湾に侵攻したり、北朝鮮が各地にミサイルを発射したりする事態になれば、日本は矢面に立たされることになる。結局のところ、日本は対中国・ロシア・北朝鮮の緩衝地帯としての役割を期待され、そのために持ち上げられているのではないか。現在、QUAD(日米豪印)やASEAN+3(日中韓)など、G7以外の多様な国際協力の枠組みが存在する。いっそのことG7を脱退し、アメリカとは属国、いや同盟国としての関係は維持しつつ、地理的・利害的に関係性の薄いEUやカナダとは、より柔軟なのらりくらりとした付き合い方に変えていくのも一つの手かもしれない。かつて韓国がG8(当時)への加入を主張していた時期があったが、結果的に加入しなかったことは、現在の日本の状況を見れば賢明だったと言える。ウクライナへの支援額を比較すると、日本が約120億ドルであるのに対し、韓国は約23億ドルにとどまっている。

G7脱退に向けた具体的な提言

では、どのようにG7から脱退するのか。加入を希望する国さえあったG7から、日本が脱退するための説得力ある主張として、「我々は裕福な国ではありません。メンバーにふさわしくない」と説明するのはどうだろうか。実際、2023年の日本の1人当たり名目GDPはG7の中で最下位であり、OECD加盟38カ国中22位と、21位の韓国をも下回っている。わが国は皆様のような経済エリート国家とは異なり、喫緊に国内経済を立て直す必要があり、食料自給率の問題、高騰する電気代など、対処すべき国内課題が山積している。そのため、国際社会全体に影響を及ぼすような高度なレベルの国際会議に参加する余裕がないのです、と率直に伝えるのだ。これからはG6で議論を進めていただくか、日本に代わる新たなメンバー国を選んでください、と提案する。

本記事のテーマ(日本の国際関係とG7脱退論)を描いたイラスト本記事のテーマ(日本の国際関係とG7脱退論)を描いたイラスト

脱退後の可能性と個人的な印象

G7という枠組みから外れることができれば、ロシアや中東各国に対し、水面下で「これからはよろしくお願いします。G7を脱退したので、貴国ともっと自由に、制約なく交渉できるようになりました」と働きかけられるようになるかもしれない。もちろん、これは容易に実現する話ではないだろう。しかし、G7やNATOの方針に振り回される現状を見るにつけ、このような大胆な「妄想」を抱かざるを得なくなるのだ。付け加えるならば、私の記憶の範囲では、中曽根康弘氏、小泉純一郎氏、安倍晋三氏以外の首相は、サミットの場で各国の首脳と楽しげに談笑している姿があまり見られず、「孤立(ぼっち)」しているイメージが強い。特に菅直人氏や菅義偉氏、あるいは石破茂氏にはその傾向があったように思う。そうした、見ていて情けなく、忍び難い光景を見なくて済むようになるだけでも、心が落ち着くのではないだろうか。

以上のように、日本がG7から脱退するという選択肢は、現在の国際情勢における日本の立場や国内経済の状況を踏まえると、一考に値するのではないか。G7参加による負担やリスクを避け、より自国の利益に資する柔軟な外交を展開するため、そして何よりも国内の再生に注力するため、大胆な再考が求められている。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』など。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

出典:「週刊新潮」2025年7月10日号 掲載