【モスクワ=小野田雄一】ロシアのプーチン大統領は3日、創設70周年を記念して首脳会議を開く北大西洋条約機構(NATO)について、「紋切り型の(安全保障の)ブロックという考え方は、急激に変化している現代世界で問題解決の手段にはなりえない」との認識を示した。「ロシアにとってNATOの拡大は安保上の潜在的脅威の一つだ」とも述べた。露南部ソチで開催された海軍関連の会議での発言。イタル・タス通信が伝えた。
プーチン氏は、NATOは旧ソ連に対抗するために創設されたと指摘。「もはやソ連も、(ソ連を中心とした軍事同盟の)ワルシャワ条約機構も存在しないが、NATOは存続するだけでなく発展している。NATO加盟国の総軍事費は世界全体の70%超に上る」と述べた。一方、国際テロや地域紛争、大量破壊兵器の不拡散といった問題ではNATOと協調して対処する準備があるとした。
ソ連崩壊後、ロシアはNATOと比較的良好な関係を維持していた。しかしNATOの東方拡大や08年の旧ソ連・ジョージア(グルジア)紛争、米国が主導する欧州ミサイル防衛(MD)構想、14年のロシアによるクリミア併合、今年8月の米露間の中距離核戦力(INF)全廃条約の失効などで関係悪化が続き、対立は先鋭化している。
プーチン氏はこの日の会議で、露海軍は今年、潜水艦2隻や支援艦などの艦艇23隻、航空機3機を含む480以上の装備品が増強されたとの認識を示した。