ネタニヤフ首相、訪米で米との溝露呈 ガザ停戦・イラン核開発巡り

イスラエルのネタニヤフ首相は4日間の訪米を終え帰国した。トランプ米政権は滞在中、イスラム原理主義組織ハマスとの停戦を促したが、大きな進展は見られなかった。イランの核開発を巡っても、対話による解決を模索する米国との温度差が浮き彫りになった。軍事力行使を重視するネタニヤフ氏と、外交的解決に傾倒する米政府の方向性の違いが際立つ訪米となった。

ガザ停戦案への期待と「最低条件」

ネタニヤフ首相は帰国前に放映された米メディアとのインタビューで、カタールでハマスと間接協議が進められている、パレスチナ自治区ガザを巡る米国主導の60日間の停戦案について、「2~3日間」での合意成立に期待を示した。

しかし、首相は帰国前に発表した声明の中で、ハマスが求める恒久的な停戦については、「最低条件」として以下の3点を挙げた。①ハマスの武装解除②ハマスの軍事力や統治能力の除去③ガザの非武装化。首相は、停戦期間中にこれらが実現しなければ、ガザ攻撃を再開する意向を示唆した。

米政権の停戦推進への試み

「ピースメーカー(平和の創造者)」としてノーベル平和賞受賞を目指すトランプ大統領は今回の訪米中、ガザ停戦の実現に意欲的に取り組んだ。これは、当初予定されていなかった7日および8日のネタニヤフ首相との急遽の会談にも表れている。

米政府内部では、イスラエルがガザでの停戦に応じれば、シリアとの和平仲介も行うという案が浮上したとされる。米国はハマスに対し、恒久停戦交渉がまとまらず60日の停戦期間が終了しても、戦闘停止は維持されると保証したと報じられた。

トランプ大統領にノーベル平和賞推薦状のコピーを手渡すイスラエルのネタニヤフ首相。ガザ停戦への米国の働きかけの一幕。トランプ大統領にノーベル平和賞推薦状のコピーを手渡すイスラエルのネタニヤフ首相。ガザ停戦への米国の働きかけの一幕。

ハマス側の不満表明

米政権の積極的な努力にもかかわらず、ハマスは9日の声明で、ガザへの食料搬入の増量やイスラエル軍のガザからの撤収など、複数の問題が「協議中」であり、対立が解消されていない状況への不満を表明した。

イラン核開発巡る米との対立

ネタニヤフ首相と米側との隔たりは、イランへの対処方針でも表面化した。首相は帰国前の声明で、たとえ米・イランの核協議が再開されても、イランの核保有の脅威が消えない限り、「別の方法」で脅威を除去すると述べた。これは、6月に続く核施設などへの再攻撃を示唆していることは明らかである。

訪米の評価と今後の見通し

イスラエルの有力紙ハーレツ(電子版)は7月10日、ガザやイランの情勢に大きな転換をもたらすとの期待もあった今回のネタニヤフ首相の訪米が、トランプ政権とのすれ違いばかりが目立ち、「まったくの失敗」に終わったと論評した。

カタールでのイスラエルとハマスの間接協議は続く可能性はあるものの、停戦実現に向けた成否の見通しは、今回の訪米を経てさらに不透明になったと言えるだろう。

米メディア、イスラエル首相府、ハマス、ハーレツなどの報道に基づく。