宝くじ当せん、明暗分けた結末とは?市役所騒動と当たりくじ焼却の異聞

今年もサマージャンボ宝くじとサマージャンボミニが発売され、多くの人が夢を追っている。しかし、高額当せんは喜びだけをもたらすとは限らない。過去には、宝くじを巡る「騒動」が各地で発生している。「宝くじ異聞」と題し、全国で実際に起こった出来事から、当せん後の人間模様を紹介する連載の第二回として、市役所の同僚男女による高額当せんの後日談、そして当たりくじを燃やした男性の驚くべき顛末をお届けする。

過去の宝くじ騒動事例に見る人間の機微

宝くじ当せんを巡るトラブルは枚挙にいとまがない。約2年前、秋田では理髪店の店主と常連客が共同で購入した宝くじのうち、常連客のくじだけが1250万円に高額当せんした一件があった。店主は「当たったら山分けする約束だった」と主張したが、常連客はこれを否定し、激しい口論に発展したという。

また、長野県では1000万円に当せんした工員が、職場の人間関係が悪化することを恐れ、なんとその当たりくじを燃やしてしまったという事例も報じられた。しかし、その後、彼が燃やしたくじは実は「カラくじ」(偽物や無効なくじ)だった可能性が高いと新聞記事で指摘され、町中のひんしゅくを買うことになった。

幸いにも、今回注目する市役所のSさんとNさんのケースでは、二人は当せん金3000万円を折半することで合意し、大きなトラブルには発展しなかった。しかし、もしNさんに全額を独り占めしようという考えが芽生えていたとしたら、紛争に発展する火種は十分に存在していたと言える。

市役所での宝くじ騒動を表現したイメージ市役所での宝くじ騒動を表現したイメージ

「当たりくじ」焼却事件、その後の波紋

宝くじを焼却した長野県の工員Kさんのケースには、さらに衝撃的な後日談がある。宝くじの引き換え期限が過ぎた後、1等で換金されなかったくじが全国に1本残った。これはKさんが燃やしたものが本物だった可能性を示唆する出来事だが、その換金されなかったくじは群馬県で発売されたものだった。一方、Kさんは東京都内で購入したと主張しており、この点は現在に至るまで確定的な結論が出ていない。

しかし、「彼が燃やしたのは本物だったのではないか」という見方は根強く残っている。当時の上司は、群馬県の宝くじ売り場が都内に持ち込んで販売したケースがあったことや、滋賀県の人物から「自分も渋谷で購入し、Kさんのくじと番号が一つ違いだった。Kさんの役に立つなら証言する」という連絡があったことを明かしている。

「“焼き捨て”はカラくじ?」という新聞記事が出て以来、Kさんは町を歩けば見知らぬ人に唾を吐きかけられたり、ジュースの空き缶を投げつけられたりするなど、いわれのない誹謗中傷に苦しめられた。もし彼が燃やしたのが本当に本物の当たりくじだったとしたら、彼は自身の行いによって、最も避けたかったはずの職場の人間関係だけでなく、社会生活そのものを失うという悲劇的な結末を迎えたことになる。彼は昨年の秋に勤め先を辞職しており、職場の平和を守るために取った行動が、結局は裏目に出てしまったのである。

まとめ:宝くじが映し出す人間関係の光と影

宝くじの高額当せんは、人生を一変させるほどの財産をもたらす可能性がある一方で、人間の欲望や猜疑心を引き出し、人間関係に深刻な亀裂を入れることもある。市役所のケースのように、冷静な判断と合意によってトラブルを回避できた例もあれば、当たりくじを燃やした男性のように、善意(あるいは恐怖)からの行動が裏目に出て、かえって悲惨な結果を招いてしまう例もある。これらの異聞は、単なる幸運や不運の物語としてだけでなく、お金が絡む状況における人間の本質や、予期せぬ出来事への対応の難しさを示唆している。

参考:
「週刊新潮」1981年7月9日号 再編集記事