女性に選ばれる地域へ:栃木県の男女賃金格差と女性流出、その対策

栃木県で指摘される「静かなる有事」。それは出生率低下に加え、女性の県外流出が招く深刻な人口減少問題です。特に、都道府県別で最大の男女間賃金格差(71.0)が、女性が地域を離れる大きな要因と分析されており、県は対策を急いでいます。

栃木県における深刻な男女間賃金格差と女性流出の現状

政府の2023年統計によると、男性賃金を100とした場合の女性賃金水準、すなわち男女間賃金格差が最も大きいのは栃木県で、その値は71.0です。この格差の背景には、男女の平均勤続年数の大きな差や、管理職に占める女性の割合の低さが挙げられます。この結果、多くの女性が栃木県から東京圏へと転出し、2020年には20~34歳の未婚者の男女比が女性1に対して男性1.32と不均衡が生じています。

人口減少対策としての栃木県の取り組み

栃木県は、こうした人口減少への対策を具体的に検討するため、「県人口未来会議」を設置しました。会議では、県外への転出超過を解消するため、「男女間賃金格差の是正」や「女性のキャリア形成支援」など、各分野で企業が取り組むべき行動を示すチャートを作成し、企業への働きかけを強化しています。

栃木県人口未来会議の初会合の様子、人口減少対策を議論する専門家や関係者たち栃木県人口未来会議の初会合の様子、人口減少対策を議論する専門家や関係者たち

さらに、賃金を5%以上引き上げ、かつ女性管理職比率の改善や非正規雇用の正規化といった格差是正に取り組んだ企業を支援する新たな制度も設けました。この制度では、賃金を引き上げた従業員1人につき5万円が支給されます。

専門家が指摘する賃金格差と地域衰退の悪循環

首相補佐官として賃金・雇用問題に携わった経験を持つ矢田稚子氏は、男女間賃金格差は「男女の活躍度に差がある結果だ」と指摘します。地元で十分に活躍できていないと感じる女性が、SNSなどで地域外で活躍する女性の姿を見て、「地元では活躍できない」と感じて流出する。賃金格差と女性流出の間には緩やかながら相関関係があるとの見方を示しました。

さらに矢田氏は、賃金格差が女性の流出を招き、男女の人口不均衡、婚姻率や出生率の低下へと繋がり、結果として地域全体の活力が失われ、女性が活躍できる場がさらに減少するという悪循環に陥ると分析。「女性に選ばれる地域を作らなければ、人口減少を止めることはできない。女性が活躍できる地域を作ることは、地域の持続可能性のためにも極めて重要だ」と強調しています。

栃木県が直面する男女間賃金格差と女性流出は、単なる経済問題に留まらず、地域全体の人口減少と活力低下に深く関わる「静かなる有事」です。この悪循環を断ち切り、持続可能な地域社会を築くためには、女性がキャリアを築き、十分に活躍できる環境を整備し、「女性に選ばれる地域」を目指すことが不可欠です。栃木県の新たな取り組みが、この重要な課題解決への一歩となるかが注目されます。

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